日立製作所は顧客協創方法論「NEXPERIENCE」を唱え、新たなビジネスモデルを提案している。(写真はイメージ)

 IoTはビジネスの様々な領域での活用が検討されているが、製造業はIoTを活用した外部へのサービス提供が苦手である。

 IoT活用ビジネスによる顧客密着競争において、製造業がコモディティ化したハードウェアの提供者に成り下がらないための解決策について、事例を交えながら紹介する。

IoT活用の全体像

 IoTをビジネスに活用するのは、(1)内部の業務の改善・効率化、(2)自社の製品・サービスの効率化・高度化、(3)顧客への新規のサービス提供の3つの目的がある。

図表1 IoTのビジネスへの活用
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 (1)の内部活用は、例えば開発業務にデジタル化された顧客の声を活用したり、工場の生産業務をデジタル化し、品質改善や歩留まり改善につなげることなどが想定される。コストダウンやスピードアップなど効果が見通しやすいことから投資も容易で、開発・生産・調達・販売など引き受け組織が明確であり、社内プロジェクトとして進めやすい。

 (2)の自社の製品・サービスの効率化・高度化は、例えば火力発電所、航空機エンジン、大型医療機器の運転情報、予防保全、故障原因分析などがある。こちらも製品・サービスの効率化と高度化が結果となり、自社だけが実施していない場合の競争力低下を想定すると、戦略上実施しなければならない。

 技術要素(センサー、通信方法、アルゴリズムなど)と収益モデル(無償、有償、有償なら定額、従量課金、成果報酬などの価格形態の別)を決めなくてはならないが、あくまでも既存の製品・サービスのアップグレードのため、既存組織の枠組みに収まりやすく推進上の課題も多くない。

 一方で、(3)の顧客への新規のサービス提供については、上記(1)、(2)と比較して、機能部門や事業部門の引き受け主体が不明確で、サービスとしての効果検証も済んでいないことから投資を進めにくく、実施主体となる組織も不明確である。