(英エコノミスト誌 2016年9月17日号)

英労働党、コービン党首を不信任 辞任拒否 EU離脱で混乱

英ロンドンの自宅を出る労働党のジェレミー・コービン党首(2016年6月28日撮影)。(c)AFP/BEN STANSALL〔AFPBB News

労働党が内部崩壊すれば、英国は野党の役目を果たす党を失う。これは大方の認識以上に危険な事態だ。

 集会を開けば大勢の人が集まって声援を送る。スマホを手にした若者たちからは一緒に写真を撮らせてほしいと頼まれ、ツイッターに何かを書き込めば必ず熱心に読んでもらえる。その人物は誰あろう、ジェレミー・コービン労働党党首だ。

 信じがたいことに極左のロックスターになったこの老政治家は、9月24日の労働党党首選挙で地滑り的な勝利を収め、再選される見通しだ。投票権を持つ党員・党友らの中には、ただ彼を支援したいがために加わったと語る党歴1年未満の人が何十万人も含まれている。

 だが、コービン氏が労働党の党員・党友など計50万人の間で人気があるとしても、英国全体の有権者4500万人の間でそれがそのまま再現されるわけではない。同氏は資本主義を打倒したり英国の核兵器を一方的に廃棄したりしたいと述べているが、ほとんどの有権者はこれに賛同していない。ウラジーミル・プーチン氏や故ウゴ・チャベス氏といった独裁者に好感を抱いていることにも、有権者は同調していない。

 労働党の支持率は現在、野党としては30年ぶりとなる低水準に落ち込んでいる。コービン氏に最も共感している若年層では、純支持率がマイナス18%*1で、65歳以上の層ではマイナス68%だ。これでは、労働党は次の選挙で多くの議席を失うことになる。しかも、それだけでは済まない。

 政党が不適切な候補者を立てることはよくある(主流派の米共和党員は、ドナルド・トランプ氏の支持に尻込みしている)。しかし、その対価の支払いは1度の選挙で終わるのが通例だ。これとは対照的にコービン氏は、労働党を自分の仲間で固めつつあり、政権を取ることよりも長期的な「運動」を起こすことに関心を持っているように見受けられる。保守党は今後数年間、議会で野党議員から厳しい追及を受けることなく、政権運営を続けることが期待できるだろう。

 西側諸国で最も安定的に票を集めてきた党が取るに足らない存在に転落する話は、どの国の政党にとっても警告となる。中道のリーダーの下で13年間政権を維持し、最低賃金から同性婚に至るさまざまな分野で改革を進めてきた労働党にとっては悲劇となる。そして、英国全体にとっても悪い知らせとなる。メキシコから日本に至るさまざまな国の経験が示唆するように、有力な野党が長期間存在しない状態は政府の劣化を招く。

*1=「好ましい」という回答の比率から「好ましくない」という回答の比率を差し引いた値