(英エコノミスト誌 2016年9月10日号)

勤務時間外のメールなどから労働者を守る、独仏で対策進む

ドイツ・ベルリン(Berlin)で、ネットサーフィンする男性(2011年6月23日撮影、資料写真)。(c)AFP/DAVID GANNON〔AFPBB News

内向型の従業員を支援すれば会社のためになる。

 ほとんどの企業は従業員を人種、性別、あるいは性的嗜好で差別していないだろうかと心配する。だが、内向的な従業員の不当な処遇についてはほとんど考えていない。心理学者のカール・ユングが「内向型」と「外向型」という区別を見いだしたのは1921年のことだ。マイヤーズ・ブリッグズ・タイプ指標をはじめとする性格診断テストによれば、内向型は全人口の3分の1から半分を占めている。

 内向型人間が苦しんでいることを論じたスーザン・ケイン氏の著書『Quiet:The Power of Introverts in a World that Can’t Stop Talking(邦訳:内向型人間のすごい力―静かな人が世界を変える)』は200万部を超える売れ行きを記録し、同書をベースにしたTEDトークの再生回数は1400万回を突破した。それなのに、内向型人間に対する企業のアプローチは、どちらかと言えば悪くなっている。

 その最大の要因は、オープンプラン型(大部屋)のオフィスといわゆる「グループワーク(共同作業)」の流行に求められる。退屈な仕事の大半をコンピューターがやってくれるこの世界においては、イノベーションこそが成長をもたらす万能薬だと企業は考えている。それは確かにその通りだ。だが、創造性を発揮するよう従業員に促す最善の方法はオフィスの間仕切りを取り払い、ひっきりなしに会議を開くことだという間違った結論を導き出した。

 この結論は多くの理由から思慮を欠いている。まず、人々を隔てる物理的な壁と精神的な壁が似ているという陳腐な見方を根拠にしている。また、雑音が聞こえたり作業中に声をかけられたりすると集中しづらくなることを無視している。さらに、外向型人間はほかの人々からエネルギーをもらうが、内向型人間は充電するために自分の時間が必要になることを企業はしばしば忘れている。

 常に誰かとつながっていたいという最近の流行も、従業員の昇進が検討されるときに内向型人間に向けられる昔ながらの偏見を助長している。多くの企業は無意識のうちに、リーダーシップのスキルと外向型であること――つまり、自分のエゴを前面に出し、握手をし、公の場でぺらぺら話し続けるのが苦にならないこと――は同じだと見なしている。この見方に従うなら、ドナルド・トランプ氏は偉大な経営者の最高の理想になる。

 しかし、経営学の泰斗ジム・コリンズ氏は著作『Good to Great(邦訳:ビジョナリー・カンパニー2―飛躍の法則)』で、業界トップの座を長期間維持する最高経営責任者(CEO)は物静かで控えめな傾向があると指摘している。つまり、自分のエゴよりも会社を優先させ、背景に溶け込むことが多い人たちなのだ。