米国とサウジアラビアの同盟関係のひび割れから世界経済は戦後最大の危機を迎えることになるかもしれない(写真はイメージ)

 日本経済新聞(9月2日付、電子版)は、米エネルギー市場調査会社ストラテジック・エナジー・アンド・エコノミック・リサーチのマイケル・リンチ社長のインタビュー記事を掲載した。リンチ氏は日本ではあまり名前が通っていないが、原油市場分析の分野では世界的に評価が高い。

 そのインタビューの内容で興味深かったのは、リンチ氏が「ピークオイルはもう来ない」と述べ、2000年代に一世を風靡した「ピークオイル」論にとどめを指したことだ。

今後、長期にわたり原油価格に下押し圧力

 ピークオイル論とは1950年代に米国地質調査所のハバート氏が提唱した説で、「世界の原油生産量はピークに達した後に、釣り鐘のような曲線を描いて急激に低下する」というものだ。

 1972年にローマクラブが「成長の限界」を発表した当時、原油の「寿命」はあと30年と言われていた。その頃は、原油埋蔵量は2兆バレルで既に1兆バレルを産出しているため、残り1兆バレルの原油は早晩枯渇すると見られていた。国際エネルギー機関(IEA)も2010年に「在来型の原油生産量は2006年にピークを迎えていた可能性が高い」としている。

 しかし、ピークを迎えたはずの米国の原油生産量は、2014年に過去最高を更新した。以前は商業ベースに乗らなかったシェールオイルの生産量が急増したからだ。

 現在は、シェールオイルをはじめとする非在来型の採掘可能な原油埋蔵量が拡大している。リンチ氏は「世界の原油埋蔵量は11兆バレルあり、既に産出した分を除いても、今後250年以上、世界の需要を賄える規模」と述べている。