(英フィナンシャル・タイムズ紙 2016年9月9日付)

テリーザ・メイ氏、英首相に就任 「世界での新しい役割」を約束

英ロンドンの首相官邸前で演説するテリーザ・メイ新首相(2016年7月13日撮影)。(c)AFP/Adrian DENNIS〔AFPBB News

 あの大騒ぎはいったい何だったのか。太陽はまだ燦々と輝いているし、経済は成長している。スコットランドだってまだ連合王国を離脱していない。大惨事になるという心配ばかりしていた親欧州派には、ブレグジット(英国の欧州連合=EU=離脱)は英国にとって良いことだったと認めてもらおう。世界は今、英国が真の「主権」国家として戻ってくるのを待っている。あとは、ブリュッセルと早めに袂を分かつために、テリーザ・メイ新首相の率いる政府が離脱交渉のペースを上げるだけだ――。

 英国のEU離脱を決めた国民投票から3カ月近く経った今、世間にはこんなムードが漂っている。確かに、細かい点をあげつらうことはできる。いわく、一部の経済指標が最近改善しているのは、これから始まる好景気の兆しではなく、投票後の急落の反発にすぎない。いわく、企業が投資を手控えているという話は少なくない。いわく、財政が悪化しそうだ。

 英ポンドの下落については、確かに輸出製品の価格は安くなったが、国民は生活水準の低下という犠牲を払っている。かつて労働党のハロルド・ウィルソンが首相を務めたとき、英ポンドの切り下げは有権者の財布の中身には影響しないと主張して野次られたではないか、といった具合だ。

 とはいえ、横柄な態度で現実を否認するのが最近の風潮だ。いずれにしても、国民投票直後の影響についての議論は的外れだ。明るい独立した未来が開けると快哉を叫んでいる離脱派は、EUから離れることを1つの出来事だと思っている。だが実際にはブレグジットは長くて曲がりくねった道のりになる。こう言ってよければ、ゆっくりこみ上げる怒りのように、経済と政治の面で費用のかかる、何十年もじわじわ続くプロセスなのだ。

 こんな分かりきったことを強調するのは、大声を出して英国人を黙らせたいからではない。今のところうまくいっているようだという事実は、これから目にする結果についてほとんど何も語っていないということを言いたいのだ。