ふるさと納税による寄付金で修復された古い町並み(佐賀県嬉野市提供)

 ふるさとチョイスやさとふるをはじめとしたポータルサイトの登場によって、小さな自治体がネット参加できるステージも整い、いよいよ自治体が「ふるさと納税」への取り組みを本格化していくことが予想される。

 しかし実はそこに、死角が潜んでいる。

 日本にもいまだネットを利用しない人は一定数いるのである。特に、高齢者ではその割合が高くなる。

電話での問い合わせ殺到

 ポータルサイトは確かに「ふるさと納税」にかかる手続きを簡略化したが、ネットを利用しないという人にはそれも意味をなさない。彼らには今も、電話での問い合わせやファックス、紙を媒介にしたやりとりが発生するのだ。

 昨年、佐賀牛を中心にした返礼品で7万3000件を超える寄付を集めた嬉野市では、電話による問い合わせが殺到したという。ファックスや郵送での申込書のやり取りに担当の坂田氏を始め、複数の職員がその業務にかかりきりにならざるを得なかった。

 「12月に入ってからは、1日中電話が鳴りっぱなしでした。毎日その対応に追われて、本来の仕事が全くできないほどでした。有り難い気持ちはあるものの、正直、大変でした」(嬉野市・坂田千夏主任)

 翌年の確定申告で控除を受けるためには、前年の間に寄付をしておく必要がある。お歳暮の時期とも重なり、12月には特に寄付が集中するのだ。

 電話での申込みが12月だけで450件。7万3000件を超える年間の件数と比較すればわずかな割合だが、ネットによらない寄付の申込みには、職員の手間は何倍、何十倍かかると言っても過言ではない。1カ月で数百件の申込みが入れば、ほかの仕事ができなくなるのもうなずける。