バンコクにあるフードコート。アヒル料理が売られる。

 世界三大スープの1つである「トムヤムクン」に代表されるタイ料理は、エスニック料理として日本でも人気を博している。ココナッツミルクを使った「グリーンカレー」や、鶏肉のひき肉をバジルとともに炒め、目玉焼きを乗せて白米と一緒に食す「ガパオライス」など筆者も大好きだ。

 しかし、日本で食べられるタイ料理は日本風にアレンジされているのがほとんど。そこでバンコクから、本場タイ料理のあまり知られていない魅力を通し、国際化が進むタイの現在の食事事情を現地からお届けしたい。

米は日本よりはるかに多様

 日本のレストランや食堂で「ライス」と頼めば出てくるのは日本米だ。しかしタイではちょっと事情が異なる。「タイ米にしますか。それとも、もち米にしますか」と聞いてくる店がある。

 世界でも有数の米生産国であり消費国でもあるタイでは、年間の平均気温28℃という高い温度を利用して、1年を通して多様なお米が栽培されている。タイのお米といえば「細長くてぼそぼそしている」という印象を持つ人も多いだろうが、現地で食べられているお米は多くが「もち米」だ。日本で「もち米」といえば、祝いの席で食べられる「赤飯」などが思い浮かぶ。しかし、タイではもち米は日常の主食として食べられている。

 円筒状の網カゴに盛られた炊きたてのもち米は、文字通り「もちもち」とした食感で、タイ料理の旨味を余すところなく包んでくれるのでタイ料理にぴったりだ。

 他にも、炊き上げると芳しい香りを放つタイ米の中でも最高品種の「ジャスミンライス」は、香りだけでも食欲がそそられるが、スパイスがふんだんに使われたタイ料理と一緒に口に含むと奥行きを持った味わいを感じられる。日本ではあまり見かけない「赤米」や「黒米」なども栽培されている。スーパーに行けば多種多様な米が手軽な値段で買える。

バンコクの某スーパーマーケットで山積みの米。