韓国で人気のチョコパイのパッケージには漢字で「情」の文字が

 「本当にこんな法律を守れるのか?」「いや、もう3万ウォン(1円=10ウォン)を超える食事をご馳走になるのは駄目だ」「法律の施行前ならゴルフの接待も大丈夫だから早く行こう」――

 韓国で1本の法律施行を前に官界、産業界、メディアから飲食店、ゴルフ場が騒然となっている。厳格な汚職防止法が9月28日に施行になるのだ。

 法律の名称は、「不正請託および金品などの授受禁止法」。内容は、公務員などに対する不正な請託を禁じるものだ。

賄賂罪より厳しい

 もちろん、韓国にも、公務員などに金品を渡して不正な請託をすることは禁じられている。賄賂罪だ。

 ところが現行の贈収賄罪では不正は防げないと、うんと厳しい法律がさらにできたのだ。いったい、この法律とはどんな内容なのか。

 韓国では、この法律を一般的には「金英蘭(キム・ヨンラン)法」と呼ぶ。この法律を最初に発議した人物の名前が由来だ。

 金英蘭氏は1956年生まれ。ソウル大法学部在学中に司法試験に合格し、判事になった。夫も司法試験を首席で合格して検事になり、法曹界では秀才法律家夫婦として知られる。

 金英蘭氏は2004年に40代で女性初の大法院(最高裁判所に相当)の判事になった。異例の「飛び級出世」だった。

 6年間の任期を終えた後、不正腐敗を防止したり、人権を保護するために一般国民からの告発や情報提供を受ける政府機関「国民権益委員会」の委員長に就任し、2012年まで努めた。

 不正腐敗の撲滅や人権保護に熱心な法律家で、在任中にこの法案を作成した。