ルワンダの首都キガリの街並み(筆者撮影)

 ルワンダ南部の町ブタレ近郊にある虐殺記念館には、おびただしい数の虐殺被害者の骨とミイラが安置されていた。安置所に一歩足を踏み入れると、石膏の乾いたにおいの中に、饐(す)えた時間のにおいが混ざっている。

 ブタレ・首都キガリにある2つの虐殺記念館は、違和感ばかりだった。

 展示は加害者側の民族とされるフツ族の非難に終始していて(確かに虐殺には加害者/被害者がいるのだが)、その背景に関する歴史的記述は予想外に少なかった。ルワンダがベルギーの植民地だった時代の民族関係や、結局何がこの虐殺を引き起こしたのかといったことについては、あまり言及されていなかった。

 どうやら、展示には立場があるようだった。フツ族を支援していたフランスは当然激しく非難されていたが、アメリカの不介入についての言及は薄く、ざっくりと国際連合の失態というような形でまとめられていた。

 よく見ると、入場無料の記念館入り口には透明の募金箱が置かれていて、床はピカピカに磨かれて白く光っている。維持にはかなりお金がかかっていると見える。と思ったら、この記念館の設立者はイギリス・アメリカ系のトラストであった。

 何か目に見えない力が働いているような気がした。

ルワンダ虐殺の際に避難民をかくまったことで知られる「ホテル・ミル・コリンズ」の看板(筆者撮影)
キガリの虐殺記念館(筆者撮影)