(英エコノミスト誌 2016年8月20日号)

中国、アニメ動画で政策スローガンをラップ

シンガポールの大統領府で演説する中国の習近平国家主席(2015年11月6日撮影、資料写真)。(c)AFP/WONG MAYE-E 〔AFPBB News

中国指導部にとって、毎年恒例の避暑地での思索はくつろげる場ではなかったろう。

 ひだ入りのシェフハットをかぶった、ぱりっとしたいでたちのヤン・ジビンさんは、北戴河という保養地のレストラン「起士林」の調理場を取り仕切っている。ここはヤンさんが1971年から働き続けている職場であると同時に、毎年8月になると中国の政治エリートたちが極秘の会議のために集まるところでもある。

 ヤンさんは料理長として、このリゾート地で最も格上の西洋レストランがほとんど変わることがないように気を配っている。「メニューに載っている20種類以上の料理は、当店が100年前から作ってきているものです・・・私たちは伝統的なスタイルを守りたかったんです」。

 ここで夕食を取っていたある人物は「ホウツ(猿の意)」としか名乗らなかったが、次のように話してくれた。「起士林には30年前に初めて来た。それ以降、変わったのは値段だけだよ」。

 北戴河は、北京から東に280キロのところにある海辺のリゾート地で、タイムワープにはまり込んだような気分になる町だ。ホテルには、刺繍を施したシーツまで備わっている。しかし、年に1度の政治家たち集まりが8月16日に終わると、この町の古めかしい、時間を超越しているかのような雰囲気がミスリーディングなことが分かってきた。

 中国の政治は、めったに訪れない不確実性と緊張の時代に入った。習近平国家主席は今後数カ月間、中国共産党のあらゆるレベルにおける指導者の全面的な入れ替えを指揮することになる。そしてその作業は来年後半、新しい中央政治局(そのトップには習氏が引き続き君臨する)のメンバー発表をもって完結する。

 5年ごとに行われる中央政治局委員の交代には、中国経済の健全性に対する懸念の高まりと、習近平氏とその前任者らに近いライバルたちとの激しい争いが影を落とすことになるだろう。海辺の別荘にやって来た指導者たちは、宴会を催す気分になれなかったはずだ。

 北戴河で非公式な会議を開くという伝統を作ったのは、毛沢東だった。北京の厳しい夏の暑さと日々の決まり切った業務を逃れ、現役の政治指導者とそのOBたちが顔を合わせられる場を設けるのが狙いだった。1980年代と1990年代には、政治の舞台裏から糸を引いていた鄧小平が、名目上の責任者らに自分の考えを伝える便利な手段としてここでの話し合いを利用した。