(英エコノミスト誌 2016年8月13日号)

比大統領「人権は気にしない」、麻薬犯罪者の射殺命令継続を明言

フィリピンの北ダバオ州にある軍の駐屯地を視察するロドリゴ・ドゥテルテ大統領(2016年7月30日撮影、資料写真)。(c)AFP/PRESIDENTIAL PHOTOGRAPHERS DIVISION/RENE LUMAWAG〔AFPBB News

ロドリゴ・ドゥテルテ大統領は「撃ってから尋問する」ことで犯罪を撲滅するという公約を実行している。

 フィリピンでは、麻薬密売の容疑をかけられた人々が警察や身元の分からない何者かによって次々に銃撃される「殺害リスト」が日に日に長くなっている。ある推計によれば、ロドリゴ・ドゥテルテ氏が大統領に選ばれた今年5月9日以降、計600人を超える人が命を落とした。計1000人近いとする試算もある。

 ドゥテルテ氏は6月30日に大統領に就任すると、麻薬取引とのかかわりが疑われる政府高官の名前を公表するようになった。これまでに軍の将官、警察官、判事などが辞任と捜査への協力を命じられている。従わないとどうなるかは、殺害リストが物語っている。

 ドゥテルテ氏は外国から批判を浴びても平然としている。人権や法の適正な手続き(デュー・プロセス)など気にしないと言ってはばからない。確かに同氏は、犯罪撲滅を公約に掲げて大統領に当選した。ギャングを10万人殺害してその遺体をマニラ湾に浮かべてやるとさえ言った。だがそれ以上に懸念されるのは、貧困と犯罪によって生活が損なわれていることの多いフィリピン国民の間で、そういった流血の事態が人気を博していることだ。

 この国民の満足感は長続きしないだろう。裁判の手続きをほとんど踏まずに死刑を執行したところで、フィリピンの抱える多くの問題が解決されるわけではない。むしろ、悲惨な状況に拍車がかかるだけに終わるだろう。