(英フィナンシャル・タイムズ紙 2016年8月1日付)

米NY、最貧地区とウォール街周辺の平均寿命の差は11年

米ニューヨークのウォール街にあるニューヨーク証券取引所(2015年6月17日撮影)。(c)AFP/KENA BENTACUR〔AFPBB News

 思わず怒りを爆発させてしまったことが最近ありますか――。その辺の米国人にそう尋ねてみたら、かなりの確率で、サービスを提供する企業に電話をかけているときに怒鳴ってしまったという答えが聞けるはずだ。その企業がケーブルテレビ会社か、携帯電話会社か、航空会社か、あるいは医療保険会社なのかはほとんど問題ではない。彼らに共通するのは、相手の企業を懲らしめるためにできることはほとんどないという無力感を伴う腹立たしさだ。

 米国には消費者がまだ王様だった時代があった。だが、ほとんどのサービス市場でそんな時代は終わっている。もし米国の有権者の怒りについて知るカギを探そうというのであれば、有権者と消費者は同一人物であることを忘れてはいけない。消費者の大半は――各種の世論調査によれば、その割合は着実に高まっている――トランプ流の怒りの感情を抱きがちになっている。そこで大声を出してしまえば、火に油を注ぐことになるのが普通だ。だが、自分は無力だと感じている人は、そうしたことをしがちだ。

 多くの国民は本能的に、消費者としての自分が無力感を覚えるのは自由市場のせいだと考えている。実際には、この問題は競争が不十分なことから来ている。選挙区の区割りが現職議員に有利なように操作される政治の世界と同様に、米国の大きなサービスセクターのほとんどは一握りの企業に支配されているのだ。しかも、その企業の数はさらに減る傾向にある。

 英エコノミスト誌の調べによれば、ここ10年間で上位4社が目に見えて市場シェアを拡大した――それにより、懲らしめられることなく消費者に対応できる余地も拡大した――業界には、通信、情報技術、運輸、小売サービス、銀行などがある。

 米大統領選挙の予備選でバーニー・サンダース氏とドナルド・トランプ氏がなぜあれほどの支持を集めたのか(2党の予備選に投じられた票の40%超がこの2人に集まった)。読者がまだ不思議に思っているのなら、それは米国の政治がいかに不正に操作されているかを2人が語ったからだ。ほとんどの米国人が経済について同じことを考えるのは、決して偶然ではない。

 また、彼らにはそう考えるだけのもっともな理由がある。事態が悪化してしまったことを最後に知るのは、裕福で、親類縁者や有力な知り合いにも恵まれているコグニティブ・エリート*1たちだ。首都ワシントンの住民の半分はここに属する。今世紀に入って以来、経済における富者のシェアは急拡大した。経済における企業利益のシェアも同様に急拡大している。

*1=企業の幹部や弁護士などの専門職に従事する知的な人々のこと