“先日、およそ3年ぶりに東京ディズニーランドに行ってきました。下の子が小学校に入学し、身長が117センチを超したのを確認してのインパーク。3年前には身長制限で乗れなかったアトラクションにも、すべて乗れるようになりました。さらに嬉しいことに、下の子はその日ちょうど誕生日でした。ワールドバザールでの買い物の際には、それを知ったキャストの方からレシートに打ち込まれた「ハッピーバースデー」の文字を、「ミッキーからだよ」と渡していただき、とても感動しました。ゲストに対するサービスにはいつも頭が下がります。” 

 上記は私が作成した文章だ。「インパーク」「キャスト」「ゲスト」。普段はもちろんこのような言葉づかいはしない。

 ディズニーランドに行ったことがある人でも、これらの言葉を使った文章には違和感を覚えるのではないだろうか。なじみがないのは、これらが「運営側」の言葉だからである。

 私はこれらディズニーランドに特有の言葉づかいを、ある小説から学んだ。

 その小説とは『ミッキーマウスの憂鬱』である。2005年に松岡圭祐によって上梓されたこの物語には、運営側から見た東京ディズニーランド、つまり夢と魔法の国の「裏側」が描かれている。

 ということで、今回のテーマはズバリ「現実の裏側」を暴く3冊。夢から覚めたくないという方、騙され続けていたほうが幸せだという方は読まないでいただきたい。

夢は醒めてしまうのか

ミッキーマウスの憂鬱』(松岡圭祐、新潮文庫)

『ミッキーマウスの憂鬱』(松岡圭祐著、新潮社、税込529円)

 この物語は、東京ディズニーランドの人気アトラクションである「ジャングル・クルーズ」の船長役を演じさせることによって、「準社員」採用試験の代わりとしようという運営側の視点からプロローグが始まる。

 その採用試験においてマニュアルを逸脱して大きく減点されながら、キャストの一番の売りである笑顔を評価され、晴れてディズニーランドで働く人たちの仲間入りをした青年・後藤大輔が本書の主人公である。

 のっけから明かされる「ジャングル・クルーズ」のマニュアル台本と、案外認められているアドリブの割合に面食らいながら読みすすめていくと、いちいち出てくる肩書に何かきな臭いものを感じ始めるだろう。

 例えばディズニーランドにおいて、先にも述べた「準社員」とは、その響きから契約社員ぐらいの身分という想像を喚起するが、世間一般で言うところのアルバイトである。ディズニーランドの裏側は万事このような調子で、この小説を読むと、見映えや外聞に神経質な会社だとの印象を受ける。