スコセッシ監督映画、不正疑惑の1MDBから資金調達か

米映画『ウルフ・オブ・ウォールストリート(The Wolf of Wall Street)』(2014年)のマーティン・スコセッシ監督〔AFPBB News

 「米国史上最大級の資産差し押さえ」のニュースは、世界を驚愕の嵐に巻き込んでいる――。

 米司法省が7月20日(日本時間21日)、マレーシア政府100%出資の国有投資会社「ワン・マレーシア・デベロップメント(1MDB)」の資金流用疑惑にからみ、1MDB関係者が同資金35億ドル(約3750億円)以上を不正流用・洗浄(マネーロンダリング)したと確定し、首相の義理の息子ら親族らが保有する関連資産(10億ドル=約1070億円)の差し押さえを求め、米ロサンゼルス連邦地裁(複数訴訟案件)に提訴したからだ

 1MDBはマレーシア財務省管轄=財務相をナジブ 首相が兼務。同首相は設立者であるとともに、顧問委員会委員長兼非常勤代表だった(5月まで)。

 その中で米司法省は、「不正流用された資金をマネーロンダリングするため企てられた国際的な陰謀」と厳しく糾弾。

 さらには、今回の事件が「米国史上最大の泥棒政冶(盗賊政冶)による横領事件」と名指しで、ナジブ政権を批判するとともに、同首相が不正資金を受理したとも示唆。

刑事訴追も検討

 今回の1MDB不正横領事件は、約1年半前の2015年3月と4月に日本のメディアとして初めて、JBpress上で報道した「消えた23億ドル~マレーシア政府系投資会社の巨額不正疑惑(1)(2)(3)」(日本貿易振興機構=ジェトロ=で経済産業省所管の国のシンクタンクであるアジア経済研究所が調査論文で参考文献として引用)に関連するもので、すでにスイスでは同事件関連取引銀行(BSI)が刑事訴追を受けている。

 今回、米司法省は民事訴訟を起し、一方、嵐の渦中にあるナジブ首相は「米司法省の訴訟は、民事で刑事訴訟ではない」と主張し、暗に自らの潔白を強調するが、「米国政府も刑事事件としても捜査に着手している」(米政府筋)という。

 ナジブ首相は昨夏、約7億ドル(約750億円)の資金が個人口座に振り込まれたことを認めたが、「1MDBからではなく“中東王族からの献金”」と疑惑を否定、国内捜査を終結させていた。

 しかし、米司法省は136ページにわたる今回の訴状の中で、「中東から献金された事実はない」と否定し、1MDBからの資金横領と確定。

 7月21日には、米国と歩調を合わせるように、シンガポール金融通貨庁(中央銀行)と司法長官が、不正に関与した中心人物のジョー・ロウ氏(前述の昨年の本コラム記事参照)とその家族が保有する資産を含めた約1億8000万ドルが預けられた銀行口座などを凍結したと発表。