(英フィナンシャル・タイムズ紙 2016年7月22日付)

左から、米共和党の大統領候補ドナルド・トランプ氏(Photo by Marc Nozell)、英国のボリス・ジョンソン外相(Photo by Foreign and Commonwealth Office)、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領(Public domain)、中国の習近平国家主席(Photo by Foreign and Commonwealth Office)。

 ドナルド・トランプ氏が米共和党の大統領候補に正式に指名された。トルコでは軍事クーデターの試みが失敗した後、レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が権威主義的な締め付けを強化している。フランスは恐ろしいテロ攻撃に再び見舞われ、多くの人が命を落とした。

 英国が国民投票で欧州連合(EU)離脱を決めて西側諸国の結束に打撃を与えたことや、中国が南シナ海での領有権主張に関する国際的な裁判所の判決を拒絶したことも、このリストに加えていいだろう。

 これらの出来事は一見無関係だ。恐らく、トランプ氏は中国の九段線のことなど聞いたこともないだろう。英国のボリス・ジョンソン外相は、トルコの民主主義が蝕まれないかということよりもトルコからの移民を閉め出すことの方に関心を示している。ニースの大量殺人の動機には、自称イスラム国(IS)の勧誘と同じくらい、実行犯の精神状態の混乱が影響していた可能性がある。狂気と悪行はいずれ終わる。

 しかし、じっと目を凝らして観察すると、不愉快なパターンがいくつか浮かび上がってくる。台頭するナショナリズム、アイデンティティー政治、制度を軽蔑する態度、そしてルールに基づく国際システムのひび割れだ。政府は物事を制御できなくなり、市民の信頼を失っている。国内政治におけるけんか腰が国際舞台にも波及している。ホッブズの「自然状態」の世界とまではいかないが、世界がどちらの方向に向かっているかは明白だ。

 欧州の左右両派のポピュリズムは、2008年の金融危機に端を発した経済的苦境と、中東やアフリカの戦争や国家破綻から逃れてきた移民に対する恐怖心を糧にして勢力を伸ばしてきた。フランスならイスラム教嫌いの国民戦線(FN)、イタリアなら五つ星運動、スペインならポデモス、ドイツなら比較的最近登場したドイツのための選択肢(AfD)がそれに当たる。小さな政党の台頭で、中道右派と中道左派の政党が代わる代わる政権を担う戦後のパターンがひっくり返されている。