仲裁判断、中国外交に大打撃 習主席「一切受け入れない」

南シナ海をめぐる中国との紛争で仲裁裁判所がフィリピンに有利な判断を示すことを期待し、マニラで花を放り上げるフィリピンの活動家やベトナム人(2016年7月12日撮影)〔AFPBB News

 中国が国際法を守らない国であることがいよいよ鮮明になった。これまでも、中国は自国に力がない時はじっと我慢して、力がついた段階で一気に攻勢に出る「韜光養晦(とうこうようかい)」戦略をとってきた。

 日中中間線付近のガス田の一方的掘削や尖閣諸島の領海侵犯、並びに南シナ海の内海化などは、中国の韜光養晦戦略に基づく行動である。

 改革開放以来の経済発展によって軍備増強が可能となり力がつくと、世界を牛耳る力を持った中国であることを認めよ(G2論)と米国に迫ったこともある。しかし、人権尊重や国際法の遵守など、ステークホルダーとしての責任感が見られない点などから、米国は潔い返事をしてこなかった。

 こうして、中国はがむしゃらに力の戦略を選んだとみられる。「裁定は確定的で上訴できない」とされる今回の仲裁裁判所の判断を、「政治的茶番」「紙屑」と称して無視する態度をとっている。

 国際法の番人の一角には到底置けない「異常な国」であることを、まざまざと見せつけている。

 国連安保理の常任理事国として、世界の平和と安定に責任を負うべき中国が、確定的な効力を持つとされる仲裁裁判所の裁定を侮り、自ら大国にふさわしくない態度を示しているわけである。

 日本は過去にこの中国を相手にして難癖をつけられており、今後も相手にしなければならないわけで、無関心ではおれない。

鄧小平の「棚上げ」ペテン戦略

 中国では、2021年の共産党結党100周年が迫っており、力の誇示を推し進めてでも、人民に共産党の偉大さと政権の正統性を示さなければならない。その1つが、東シナ海や南シナ海を包含する第1列島線の内海化であるに違いない。