(英エコノミスト誌 2016年7月16日号)

南シナ海領有権、「中国に歴史的権利なし」 国際仲裁裁判所

中国・北京で、南シナ海が描かれた地図(2016年6月15日撮影、資料写真)。(c)AFP/GREG BAKER 〔AFPBB News

国際的な仲裁裁判所の判決が南シナ海での中国の権益主張に打撃を与えた。

 近隣諸国の軍隊を追い払い、海軍を増強し、さらに人工島を造成することで、中国は何年も前から、南シナ海の広い範囲について曖昧な領有権主張を行ってきた。こうした行為は近隣諸国に警戒感を抱かせ、軍事的な対立に発展している。中国はアジアにおける米国の影響力にも異を唱えている。

 そして今度は、オランダのハーグにある国際的な常設仲裁裁判所が、南シナ海に「歴史的権利」を保有しているという中国の主張は無効だとする判決を下した。判決はいろいろな論点を予想以上に幅広く押さえているうえ、非常に明確で、中国はそれに対して怒りをあらわにしている。

 この判決は南シナ海の政治情勢を変える可能性があり、長期的には、中国にどんな国になりたいのかという選択を迫る。ルールに基づくグローバルな制度を支持する国か、それとも、大国という地位の獲得を目指して、そうした制度に挑戦する国か、ということだ。

 今回の判決は、中国がフィリピンの首都マニラの北西約350キロにあるスカボロー礁を実効支配し始めたことを受け、フィリピンが2013年に申し立てた仲裁手続きに対するものだ。南シナ海という場所ゆえに、この申し立ては大変な重要性を帯びることになった。

 南シナ海は世界の貿易貨物の約3分の1が通過する海であり、中国が輸入する石油のほとんどはここを通る。海底には石油やガスも豊富に眠っている。しかし、とりわけ重要なのは、ここで領有権を主張する国が複数存在し、派遣されている軍隊も増強されていることだ。米国は先日、南シナ海に2隻の空母を投入した。判決が示される前夜には、中国海軍が実弾射撃訓練を行っていた。

 そして何より、ここは2つの世界観が衝突している場所だ。1つは、ルールに基づく国際的な秩序という米国の考え方。もう1つは、いかなる国際法よりも優先される「歴史的権利」だと中国が主張するものに基づいた考え方だ。