(英エコノミスト誌 2016年7月15日号)

安倍首相、参議院選挙で勝利宣言

都内の自民党本部で、笑顔で質問に応じる安倍晋三首相(2016年7月10日撮影)。(c)AFP/KAZUHIRO NOGI〔AFPBB News

安倍晋三首相は憲法改正に必要な議席を衆参両院で得たかもしれない。だが、経済を立て直すのが先だ。

 7月10日に行われた参議院選挙の結果が明らかになるにつれ、安倍晋三首相の顔はほころんでいった。それはそうだろう。安倍氏と自民党が2012年の暮れに政権を取り戻して以来、選挙で大勝利を収めるのはこれが3度目になる。しかも景気が失速しそうで、首相はどうやってこれを立て直すのかという疑問が強まっていた中での勝利だ。

 さらに言うなら、この勝利によって安倍氏は生涯の政治目標の実現に大きく近づくことになった。第2次世界大戦後に米国が敗戦国に押しつけた憲法のくびきから日本を解放する、という目標だ。

 連立相手の公明党と合わせて、自民党は改選121議席のうち70議席を獲得した。確かに投票率は低かったものの、連立与党は参議院をがっちり支配するに至った。さらに、考え方の近いほかの党や無所属の議員の支援を得れば、衆参両院で3分の2の議席を押さえることになる。理屈の上では、これで憲法改正の是非を国民投票で問うことが可能になる。

 ただ、安倍氏はまず景気の浮揚に力を入れなければならない。鳴り物入りで導入された「アベノミクス」で金融・財政の景気刺激策がここ3年間講じられてきたにもかかわらず、今年の国内総生産(GDP)成長率は0.9%にとどまると見通しだ。企業の景況感は横ばいで、賃金は伸び悩み、職は見つけやすいものの消費は停滞している。初めてのことではないが、アベノミクスには再起動が必要だ。

 このような状況だけに、野党の民進党がごくわずかなパンチしか浴びせなかったことは注目に値する。同党は15議席を失った。英国が国民投票で欧州連合(EU)離脱を決めて欧州が混乱したことが有権者を不安にさせ、自民党が体現する安定性を選ぶよう促したのかもしれない。実際、民進党は選挙運動では憲法改正反対にすべてを賭けており、経済政策をほとんど提案していなかった。

 予定されていた消費税率引き上げを延期した安倍氏は、「補正」予算案の編成を財務省に指示している。9月半ばに開会が見込まれる臨時国会での成立を目指すという。新たな景気刺激策の規模は10兆円(GDPの2%に相当)に上る可能性があり、GDP比約6%の今年度の財政赤字と同約250%の国債発行残高がその分増える。