(英エコノミスト誌 2016年7月9日号)

中国の銀行、業績悪い行員に尻たたき 非難殺到で幹部処分

中国東部・江蘇省の銀行で紙幣を数える行員(2016年1月7日)。(c)AFP〔AFPBB News

中国共産党は党の命運を大衆の豊かさと結びつけた。それが今度は自らの存続を脅かす可能性がある。

 1990年代以前の中国には中間層というものがほとんど存在しなかった。年間の所得が1万1500~4万3000ドル(現在のドルの価値で換算)の世帯は、2000年には500万世帯だったが、今日では2億2500万世帯がこのグループに属している。2020年には恐らく、中国の中間層の方が欧州のそれよりも多くなっているだろう。

 この目を見張る発展は世界各地で経済成長率を押し上げ、中国自体も大きく変化させた。水田は摩天楼に姿を変え、自転車の波は自動車の渋滞に取って代わられた。内向きな国民の視野も広がってきた。昨年は1億2000万人の中国国民が海外旅行に出掛けている。この10年で4倍に増えた計算だ。そしてソーシャルメディアの世界では、中国語で語り合う巨大な集団が出現している。

 しかし、欠けているものが1つある。ほかの権威主義国家では、経済的に豊かになると新たに産まれた中間層が政治の改革を要求してきた。例えば韓国では、1980年代の学生運動が軍事政権の終結に貢献した。台湾では1990年代に中間層が民主主義を要求し、権威主義の政府が自由選挙を容認するに至った。

 専門家の間では、中国はこのパターンの例外だという見方が多い。中国の都市の多くは、韓国や台湾が変わり始めた当時と同じくらい豊かになっている。ところが1989年に天安門広場で戦車がデモ隊を押しつぶして以来、中国では大規模な民主化デモが1度も起きていない。習近平国家主席は民主政治を嘲るばかりだ。

 このアプローチが機能している証拠は存在する。強硬派の習氏は強い指導者として、そして汚職と戦う闘士として多くの国民から敬われている。民主化を要求する中間層はほとんどおらず、その理由も、声を上げるとトラブルに巻き込まれるかもしれないからというだけではない。国民の中には、「アラブの春」とその後の混沌とした状況を見て、尻込みしてしまう向きが多いのだ。

 英国の国民投票で欧州連合(EU)離脱が選択されたことについても、複雑な政治問題の解決を普通の有権者に委ねることはできない証拠だと解釈する人もいる。中国政府は己を批判する人々には容赦ないかもしれないが、少なくとも国民がカネを稼ぐことは認めている。政治にさえ触れなければ、国民は好きなことをかなりの程度言ったりやったりできる。