ハッブル宇宙望遠鏡による銀河NGC1275の画像

 2016年2月17日(日本時間)に打ち上げられたX線天文衛星「ひとみ」について、「空前絶後の高精度、日本のX線天文衛星がすごすぎる」(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46306)および、その痛ましい続報「『ひとみ』に何が起きたのか」(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46660)にて、紹介いたしました。

 打ち上げからわずか1カ月後の3月26日、ひとみはミスと不運の連鎖により回復不能の損傷を受け、運用は断念されました。

 ひとみの機体は現在も軌道上を周回していますが、電力が復活する見込みはありません。今後何年もかけて、わずかな大気との摩擦によって徐々に高度を下げ、最終的には大気圏に突入して燃え尽きると予想されます。

 しかしひとみの観測装置は、短い期間ですが、試験的な天体観測を行ない、選ばれたいくつかの天体のデータを地上に送り届けていました。そしてその最初の成果が2016年7月7日付で『ネイチャー』誌に発表されました。

 この論文が示すのは、ひとみの革新的な観測装置が、見たこともないような天体データを次々に出して、天文学の常識を覆していく性能を持っていた、ということです。

 ひとみのデータがX線天文学に与える(はずだった)インパクトを、ここに解説しましょう。

ひとみからすごいデータ来た!

 今回発表されたのは、「SXS(Soft X-ray Spectrometer)」という装置を用いた「ペルセウス銀河団」の観測データです(http://www.nature.com/nature/journal/v535/n7610/full/nature18627.html)。