米空母「ハリー・トルーマン」でプラスチック製品の作成に使用されている3Dプリンタ。注射器や麻酔ガス排除装置のアダプターなどの医療品や排水管カバーなどの艦内備品を製造している(出所:米海軍)

 3Dプリンタの技術革新は留まるところを知らない。今や鼠の人工卵巣やオフィス、自動操縦車を作るところまで進み、軍事分野でも転用著しい。

 以前のコラム「中韓露にも遅れる日本、3Dプリンター軍事転用を急げ」(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46130)、「米陸軍の驚くべき試み、無人機を戦場で現地生産」(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46390)では、3Dプリンタが既に米軍では当たり前の装備となっていることを紹介した。

 今回は、米国で進むさらに新しい動きを紹介しよう。

レーダー用の電子部品やミサイル丸ごとも3Dプリンタで

 2016年1月の報道によれば、軍需製品メーカー大手の米レイセオン社がスポンサーをしているマサチューセッツ大学の研究室は、レーダー用の電子部品を金属ナノ粒子を含む導電性インクを使って製造可能な3Dプリンタの開発に成功したという。

 この電子部品は可変容量ダイオード(いわゆるバラクタ)と言われ、特定の頻度で電波を発生させたり受信させたりするために必要なものである。軍用レーダーシステム、自動車衝突防止装置、携帯電話などにはなくてはならない部品だ。また、この新型3Dプリンタは、イージス艦等が搭載するフェイズドアレイレーダーに必要な位相器や無線LANやレーダーの重要部品である周波数選択膜も作ることも可能だという。

 共同研究室長のマッカロール氏によれば、「まだ実験室レベルの技術ではあるが、実用化に成功すれば、レーダーの製造がはるかに安く簡単かつ高速になる。将来的には高性能のコンピューターチップを3Dプリンタで作るところまで行くつもりだ」とのことだ。

 さらに、米国防総省の技術研究部門である「本土防衛情報分析センター」(HDIAC)は、3Dプリンタで、コンピューターチップも含めてミサイル全体を作ることも近い将来可能になると見ている。