(英フィナンシャル・タイムズ紙 2016年6月16日付)

「英国と欧州のキス」で離脱阻止へ、国民投票前に各地でイベント

英ロンドンの英国会議事堂前の広場「パーラメント・スクエア」で、英国旗と欧州旗を持ちながらキスをするカップル(2016年6月19日撮影)。(c)AFP/Daniel Leal-Olivas〔AFPBB News

 英国民は23日に決断を下す。欧州連合(EU)残留か離脱かを問う今回の国民投票は、歴史的な節目となる。摩擦が生じることも多い英国と欧州との関係のみならず、西側社会の結束が喪失の危機に瀕している。

 もし投票でEU離脱を決めれば、その判断は取り返しがつかないこととなる。1945年以降の自由世界の秩序にとって甚大な打撃である。デビッド・キャメロン首相は、与党・保守党の分裂を修復する試みとして国民投票というギャンブルに打って出たが、効果がないことが明らかになった。

 EU残留派と離脱派による運動は、国を二分してしまった。感情が事実を脇に追いやり、熱烈なにわかポピュリストがエスタブリッシュメントに毒づいている。離脱派のリーダーの1人、マイケル・ゴーブ司法相(前教育相)は、「この国には専門家が多すぎる。もうたくさんだ*1」と言い切った。

 本紙(フィナンシャル・タイムズ)は、1973年の加盟当初からずっと英国のEU加盟を支持している。

 FTは単一通貨への参加は好ましくないと考えている。経済的に理にかなっていないからだ。だが、ユーロに参加しないこととEUから離脱することとは別の話だ。もし離脱すれば、英国経済には深刻な打撃が及ぶことになる。

 欧州がイスラム過激派、移民、ロシアの拡張主義、気候変動などの脅威に直面しているときには、建設的に問題に関与することが欠かせない。これらは複数の国が協調して対処するしかない問題なのだ。

 今回の国民投票に向けた運動では、異なる価値観が対決している。リベラルな国際主義と困窮したナショナリズムが、開放的な通商制度と自国の傍流化とが争っている。だからこそオーストラリアから日本、米国に至る友好国がこぞって残留を支持し、マリーヌ・ル・ペン氏とドナルド・トランプ氏が離脱をそれぞれ支持しているのだ。

 両陣営による議論は気がめいるほど損得にこだわっている。EU離脱の経済的コストは大きいが、残留派は損をするぞという脅しばかりを言っている。離脱派は表面的には愛国的だが、本当は不正直だ。英国は純額で週3億5000万ポンドをEU予算に拠出しているとの指摘は事実と異なる。

*1=英スカイ・ニュースのインタビューで語った言葉で、残留を支持する専門家は無視してしまえ、という意味