(英エコノミスト誌 2016年6月11日号)

「東洋のエルサレム」とも称される温州の街並み。 Photo by Malcolm Moore.

優れた商才で知られた都市が金融危機からの復活を目指して奮闘している。

 中国では、借金が命取りになることがある。小さな電気部品を製造している父親の会社で工場の中を歩き回る範楽楽氏は、このところリラックスしているように見える。5年前には工場に近づくこともできなかった。数件の投資が失敗に終わり、1000万人民元(150万ドル)もの借金の返済が滞ってしまったからだ。

 債権者の多くは元友人だった。このままでは殴られるか、下手をすれば殺されるかもしれない。そう思った範氏は数カ月間行方をくらまし、町から町へと渡り歩いた。最終的には、父親がお金をかき集めて返済してくれた。範氏が安全に帰郷できるように手配し、会社の破綻も辛うじて回避した。

 中国で最も大胆にリスクを取る人を何人か輩出しているこの中国東部の町では、こういう話は陳腐なほどだ。温州で事業に携わる人はほぼ全員(つまり、温州の人はほぼ全員)、2011年半ばの金融危機にまつわる恐ろしい話を見聞きしている。借金を踏み倒して逃げた投資家の数は、金額の大小を問わずに合計すれば数十人に達する。とことん追い詰められてビルの上から身を投げた人もいる。

 免許を持たない大規模な地下銀行がいくつも破綻し、事業会社も数百社が破綻した。公式の(非常に保守的な)推計によれば、その後の数年間で地価はおよそ25%下落している(図参照)。

 その温州の経済が、活動を静かに再開しつつある。住宅価格は再び上昇し始めた。経済成長率も昨年は8%となり、2011年以降で最も高くなった。しかし、銀行システムにはまだ不良債権が重くのしかかっており、温州市が受けた傷の多くは治癒していない。

 温州は中国経済の中で飛び抜けてひどい状況にある例外的な都市だが、痛みを伴う景気下降から足取りの重い回復へと至るその軌跡は、この国で最大級の債務負担を抱えるほかの地域にどんな将来が待ち受けているかを示唆している可能性がある。