G7開幕、各国首脳が伊勢神宮に

伊勢神宮の参道を歩く各国首脳(資料写真、2016年5月26日撮影)。(c)AFP/STEPHANE DE SAKUTIN〔AFPBB News

 伊勢志摩サミットでの安倍首相の発言は、世界に大きな反響を呼んだ。彼は「エネルギー・食料・素材など商品価格がリーマン・ショック前後での下落幅である55%と同じ」で「リーマン級の経済危機再燃を警戒する」と説明し、消費税率の10%への増税を再延期する考えをにじませた。

 ところがこの説明はサミットで各国首脳から疑問が出て、世界のメディアからも批判を浴びた。フィナンシャル・タイムズ紙は「安倍氏が説得力のない2008年との比較を持ち出したのは増税延期のためだろう」と評し、ル・モンド紙は「安倍氏は突飛な悲観主義で各国を驚かせたが、首脳の同意は得られなかった」と嘲笑した。

商品相場の暴落は危機の前兆ではなく結果

 この資料は次のように、2008年のリーマン・ブラザーズ破綻の前の状況と現在を比べているが、これは誤りだ。下の図だけを見ると、まるで商品相場の暴落が原因でリーマンが破綻したように見えるが、事実は逆である。

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 サブプライムローンに巨額の不良債権が発生していることが表面化したのは、2007年8月にフランスの大手銀行パリバがサブプライムの解約を凍結した事件だった。これをきっかけに不動産担保ローンの債務不履行が相次ぎ、金融機関が破綻した。

 そして2008年5月に、アメリカの大手投資銀行ベア・スターンズの経営が破綻して、ニューヨーク連銀に救済された。それが図の左のピークに対応し、このあと金融危機が世界に拡大し、投機資金が商品市場から引き上げたため、商品相場も暴落した。

 その金融危機の最後の段階で、最大手のリーマンが救済されなかったため、全世界がパニックになった。つまり商品相場の暴落は安倍首相の言う「危機の前兆」ではなく、金融危機の結果なのだ。