(英エコノミスト誌 2016年5月28日号)

EUとトルコ、移民・難民の送還で合意

ベルギー・ブリュッセルで開かれた欧州連合(EU)とトルコの首脳会議後に写真撮影に臨む(左から)トルコのアフメト・ダウトオール首相、ドナルド・トゥスク欧州理事会常任議長(EU大統領)、欧州委員会のジャンクロード・ユンケル委員長(2016年3月18日撮影)。(c)AFP/THIERRY CHARLIER〔AFPBB News

EUは国境を固めるために、名声を賭けている。

 本来それは形勢を一変させるはずだった。欧州連合(EU)とトルコが今年3月、欧州にやって来る亡命希望者の数の抑制を目指して合意したときには、EUの首脳や幹部の多くが慎重ながらも楽観的な見通しを描いていた。ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、合意が「持続的な汎欧州的解決策」を提示したと述べた。

 この合意では、EUが一部のトルコ国民に対するEU渡航時のビザ(入国査証)免除、難民援助への60億ユーロ拠出、トルコのEU加盟交渉の再開などに踏み切るのと引き換えに、トルコはギリシャに渡った移民を引き取ること、そしてトルコとEU諸国の国境を固めることになっていた。

 今年も100万人規模の難民が欧州を目指す可能性があったことから、混乱状態に一定の秩序をもたらすにはこの取り決めしかないように思われた。

 確かに、欧州にやって来る難民の数は減っている(図参照)。しかし、トルコとEUが交わしたこの取り決めは、いかがわしさが増しているように見える。昨年だけで何十万人もの難民が欧州を目指す足がかりにした国・トルコとの関係と、EUの名声の両方を危険にさらしているからだ。

 トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は3月の合意以降、傲慢な独裁者のような行動をこれまで以上に公然と取るようになっている。欧州の基準に従う必要などさらさらない、従わなくとも処罰されることはないと言わんばかりだ。