現在、大学教育の現場がどうなっているのか、そこにどんな課題や困難があるのかを、何回かに分けてお伝えしてみたい。かつての大学の姿を知る年配の読者には、おそらく想像もつかないような光景が浮かび上がってくるはずである。

 大学教育の変貌ぶりを示すトピックは、いくらでも挙げることができるが、今回は「初年次教育」について取り上げる。そんな言葉は聞いたことがないという方が大半なのではないかと想像するが、初年次教育こそは、「大衆化」という大学制度の構造変容の影響を受けた各大学が、それぞれに腐心し、苦悩している状況を象徴的に体現する場だからである。

 まずは、今日の大学が、いったいなぜ、そしていつ頃から「初年次教育」に取り組むようになったのかという点から見ていこう。

大学教育の大衆化

 日本の大学教育に初年次教育というジャンルを登場させた動因となったのは、この20年ほどの間に日本の大学教育を襲うことになった大学「大衆化」のインパクトである。

 以下の表をご覧いただきたい。18歳人口がピークを迎えた1992年と直近の2014年の数値を単純に比較してみる。

(*配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで図表をご覧いただけます。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46996)

 まず、少子化の進行によって、18歳人口は、現在ではピーク時の6割以下に減少している。しかし、それにもかかわらず、大学入学者の数は、1割以上も増加している。