(英フィナンシャル・タイムズ紙 2016年5月25日付)

ビル・クリントン氏は過去に「レイプ」、トランプ氏が非難

米ニュージャージー州ローレンスビルで開かれた選挙集会で演説するドナルド・トランプ氏(2016年5月19日撮影)。(c)AFP/EDUARDO MUNOZ ALVAREZ〔AFPBB News

先週の本欄で論じたように、ドナルド・トランプ氏の台頭はエリート、特に(ただし、これに限られるわけではないが)共和党のエリートが失敗を重ねてきたことの表れだ。

 トランプ氏は、人々の攻撃性や怒りがほとばしる道を作ることに成功している。これは特に目新しい戦術ではない。これまでにも数々のデマゴーグ(扇動者)がこの方法で権力を握ってきた。しかし、デマゴーグは問題の答えを示さない。それどころか、事態をさらに悪化させてしまう。

 事態はこれ以上悪化しようがないと思っている人が多いようだが、それは間違いだ。米国だけでなく世界中で、事態は今よりもっとひどくなり得る。トランプ氏が危険なのはそのためだ。同氏は米国の成功の礎(いしずえ)が何であるか、全く理解していないのだ。

 トランプ氏は右派のポピュリストだ。ポピュリストは制度を軽んじ、専門的な技術や知識を退け、その代わりにカリスマと無知を持ち込む。右派のポピュリストは外国人も非難する。トランプ氏はその上に「ディール(取引)」というゼロサム的なものの見方も持ち込んでいる。

 どの国においても、ポピュリズムの妄想が広まることには不安がつきまとう。例えばイタリアでは、間違った考えを持った人たちに笛吹きの役目を果たす能力をシルビオ・ベルルスコーニ氏が持っていたために、改革の20年間が失われてしまった。しかし、米国のほうが問題は深刻だ。なぜなら米国は、法的拘束力のある関与に立脚した永続的な制度を広めることにより、今日ある世界を形作ってきた国だからだ。

 これは米国が超党派で成し遂げたことであり、それによる結果には特に顕著なものが2つある。