(英フィナンシャル・タイムズ紙 2016年5月16日付)

トランプ氏、ストーンズの楽曲使用中止要求に「倍返し」

米ウエストバージニア州チャールストンで行われた選挙集会で、支持者を鼓舞するドナルド・トランプ氏(2016年5月5日撮影)。(c)AFP /Brendan Smialowski〔AFPBB News

 共和党大統領候補のドナルド・トランプ氏は、中国との貿易戦争を開始し、米国の国家債務の条件を再交渉するという発言でエコノミストから冷笑を買った。だが、それほど注目されなかったのは、トランプ氏が一見、もう1つ、数十年来の米国の定説を覆すと脅していることだ。「強いドル」政策がそれだ。

 米国は――少なくとも概念上は――1990年代から「強いドル」政策を守ってきたにもかかわらず、トランプ氏はこの数カ月、一貫して強い為替レートに対して警鐘を鳴らしてきた。

 トランプ氏は昨年8月、ドルは米国に「害を与え」、企業の競争力にとって「とてつもなく大きな不利益」を生んでいると断言した。「『我々は強いドルを持っている』と言うのは聞こえがいいが、大体、それだけだ」と、あるインタビューで語っている。

 トランプ氏は今月、そのメッセージを繰り返し、強いドルの概念は好きだが、ドル高は米国経済に大きな損害をもたらし、中国を喜ばせる恐れがあると述べた。トランプ氏に言わせると、中国は米国の製造業者に対する競争優位を得るために長年為替操作を行ってきた国だ。

 経済政策を担うワシントンのエスタブリッシュメント(支配階級)の一部にとっては、これは危険な言葉だ。「ドナルド・トランプが大統領に選ばれたら、彼の政権が貿易赤字を減らそうとして為替政策を利用することを見込むべきだと思う」。外交問題評議会(CFR)のシニアフェローで、ロバート・ルービン氏の下で財務省高官を務めたロバート・カーン氏はこう話す。

 そのような政策は貿易相手国からの報復を招く可能性が高く、潜在的に成長率の鈍化と貿易の減退、ドル安につながるとカーン氏は主張する。また、世界の準備通貨としてのドルの地位を弱める恐れもあるという。

 ピーターソン国際経済研究所(PIIE)のフェローで米連邦準備理事会(FRB)の国際金融部門のトップを務めたテッド・トルーマン氏は、通貨に対するトランプ氏の考えは、それが同氏の選挙運動の柱になったら金融市場に影響を及ぼす可能性があると指摘し、「一番いいのは、何も言わないことだ」と言う。