「事件は会議室で起きているんじゃない。現場で起きているんだ!」

 人気ドラマ「踊る大捜査線」で主人公の青島刑事が言った名ゼリフである。「踊る大捜査線」は管理層と現場との確執をテーマとしたドラマであった。

 現場の生の情報が上がってこない。

 これは多くの経営者や管理職の方が抱える悩みである。私は経営をコンサルティングする過程で、経営者、管理職の現場に対する認識のずれが様々な経営問題を引き起こしている事例を数多く見る。

現場の本音を聞くことの難しさ

 経営者や管理職の人たちが現場の実態、もっと言えば現場の人間の本音を把握することは決して簡単なことではない。

 人間は根源的に認めてもらいたいという承認欲求を持っている。そして、この承認欲求が派生してプライドにつながっていく。

 このプライドを脅かされそうになると、人は心を閉ざし、相手と距離を置こうとする。そのため、相手の本音を引き出すためには相手のプライドを決して傷つけてはいけない。

 良い情報を報告すると褒めてもらえ、評価が上がり、プライドを保つことができるため、良い情報は積極的に報告を上げようとする。しかし、悪い情報を報告すると叱られ、評価が下がり、プライドが傷けられるため、悪い情報は報告せずに隠そうとする。

 組織管理を行う上ではこの悪い情報をいち早く認識し、問題やリスクを広げないように迅速に対応することが求められる。そのため、経営者や管理職の人間は現場の人間のプライドを尊重し、本音を引き出すコミュニケーションをとることが必要となる。

 これは本店と支店、親会社と子会社といった関係にもあてはまる。