サウジの「自覚」にかかる原油市場の先行き

原油価格50ドル超えをうかがうも楽観はできない

2016.05.13(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46821
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 5月4日付ロイターは「米国のシェール企業の破産申請数が59社に達し、米国のテレコム企業の倒産が相次いだ2002~2003年の破産申請数(68社)に迫りつつある」と報じた。2016年の第1四半期だけで15社のシェール企業が破産申請したが、「第2四半期の破産申請数はさらに増加する」と専門家は指摘する。

 テレコムブームだった1998年から2002年にかけて発行された社債総額は1771億ドルだったのに対し、シェールブームの期間である2010年から2014年にかけて発行された社債総額は約3507億ドルと約2倍である。さらに問題なのはテレコムブーム企業が発行した社債に占めるジャンク債の割合が10%以下だったのに対し、シェール企業が発行した社債に占めるジャンク債の割合は50%を超えていることである。

 年初来の原油価格の上昇とともに3カ月にわたって値段を上げてきたジャンク債市場だったが、5月に入り勢いを失いつつある。世界最大の資産運用会社である米ブラックロックが運用するジャンク債ETF(上場投資信託)が4営業日で約26億ドルが償還されるなど警戒信号を発しつつある(5月6日付ブルームバーグ)。年率20%超の値上がりをしたジャンク債の活況に一部の投資家の間に疑念が生じたことが原因だ。

 シェール企業の倒産が今後も高水準で続けば、ジャンク債の売りは「確証」に変わり、これによるリスクオフ効果で米国をはじめとする世界の金融市場は大揺れになるだろう。

サウジはOPECの雄としての自覚を取り戻せ

 国際エネルギー機関(IEA)のピロル事務局長は5月1日、ロイターとのインタビューに対し「原油相場の底入れは世界経済の情勢次第である」と語った。だが、むしろ原油相場の推移が今後の世界経済に与える影響の方が大きいのではないだろうか。このことから原油価格50ドルは石油産業のみならず世界経済にとってもマジックナンバーなのではないかと思えてくる。

 サウジアラビアは石油を「政治の武器」に使う傾向が出ているが、ヤマニの教訓を忘れてはならない。また投資立国に舵を切ったからこそ、世界の金融市場に大きな影響を与える原油価格の動向を無視できないはずだ。そのことをサウジアラビアはいつ気づいてくれるのだろうか。OPECの雄としての自覚を取り戻すことを願うばかりである。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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