サウジの「自覚」にかかる原油市場の先行き

原油価格50ドル超えをうかがうも楽観はできない

2016.05.13(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46821
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「目標価格帯を設けない」という考え方は、「原油立国」から「投資立国」へとサウジアラビア全体の大転換を図ろうとしているムハンマド副皇太子が主導していることは言うまでもない。

 これまで何度も「OPECは死んだ」と言われてきた。だが、サウジアラビア代表がOPECの席上で「すべての生産者の利益のために減産して価格を下支えするという昔に戻ることは決してない」と明言したことは、1960年に設立されたOPECの歴史上初めてだろう。6月2日に開催される総会でOPECはついに死んでしまうのだろうか。

原油価格50ドルはシェール企業の生命線そのもの

 上昇基調にあった原油価格も、5月9日に入りカナダの山火事がオイルサンドの生産に与える影響が少ないとの見方が広がると、1バレル=46ドル台から43ドル台に急落していた(11日の原油市場は米原油在庫の予想外の減少とナイジェリアの供給懸念で同46ドル台に急上昇した)。

 カナダの山火事が発生する直前にBNPパリバとUBSの専門家は「5月中に原油価格は1バレル=30ドルに戻る」と予想していた。ゴールドマン・サックスも相変わらず弱気の姿勢を崩していないことから、市場外での供給途絶要因が新しく発生しなければ、原油価格は今後下がることはあっても上がることはないだろう。

 原油価格が再び下落すれば、米国のシェール企業がますます窮地に追い込まれることは必至である。シェール企業の昨年からの倒産件数は60社を超え、負債総額が既に約200億ドルに上っている(4月25日付日本経済新聞)。

 米ウェルス・ファーゴは「シェール企業の安定的な事業継続のために原油価格は1バレル=50~55ドルまで回復する必要がある」と指摘する。米金融オッペンハイマーに至っては「1バレル=50~60ドルに戻ったとしても、シェール企業の半数は事業を継続できる状況にない」と手厳しい。原油価格50ドルは石油業界全体にとっては望ましい水準かもしれないが、シェール企業にとっては生命線そのものである。

今年の第1四半期で15社のシェール企業が破産申請

 米国の金融機関もシェール企業への融資の引き揚げに高い代償を支払っている(4月27日付ブルームバーグ)。金融機関の多くは、埋蔵されている原油や天然ガスを担保にする融資債権を損失を出しても売却していると言われている。このような事情もあり、金融機関が年初以降にシェール企業から引き揚げた融資総額は64億ドルと2年前に原油相場が下落して以来最大となっている。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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