(英フィナンシャル・タイムズ紙 2016年5月6日付)

クルーズ氏が撤退表明 トランプ氏指名確実に 米大統領選

米インディアナ州の共和党予備選で勝利したことを受けて、米ニューヨークで演説するドナルド・トランプ氏(2016年5月3日撮影)。(c)AFP/Jewel SAMAD〔AFPBB News

 世界中の国の首都で、米国について2つのことを聞かされる。1つ目は、米国はもはや、かつてのような超大国ではないということ。2つ目は、各国政府は米国の大統領選挙の結果を見届けるまで、重要なことをすべて保留しているということだ。

 さて、ここに3つ目を加えるといい。ドナルド・トランプ氏が大統領になることは、自分たちの最悪の悪夢をも超える惨事だ、ということだ。

 米国の衰退主義はかねて誇張されていた。米国は今も唯一の超大国であり、世界中ほぼどこでも介入する力を持った唯一の国だ。米国は強大な同盟システムの頂点に立っている。過去10年ほどで変わったことは、今では一定の抑制が働く点だ。国際的にはパワーバランスが、国内では政治的なムードが変わっているからだ。

 それでも米国に匹敵する国は存在しない。仮にあるとしても、中国が米国の軍事的なリーチや技術的な力と肩を並べるようになるまでには数十年の歳月がかかるだろう。米国は欠くことのできない世界秩序の守護者だ。だから、そう、誰にホワイトハウスの主になってほしいかを決めるのは米国人だが、その選択は米国人以外のすべての人にとっても、とてつもなく重要な意味を持つ。

 トランプ氏が推定上の共和党候補になった今では、その重要度はいまだかつてないほど大きい。予備選での同氏の勝利については多くのことが言える。エイブラハム・リンカーンの「グランド・オールド・パーティー(GOP、共和党の呼称)」が自己破壊をもたらす張本人になったこと。不動産デベロッパーからリアリティーテレビのスターに転じた人物が、多くの米国人にとってグローバル化の物語と化した生活水準の低迷と文化的な疎外感に対する不安と怒りの高まりを利用したこと。そして悲しいかな、メディアがトランプ氏のことをおいしい興行的エンターテインメントとして扱うことで、そのプロセスに半ば加担したこと――。