「9次元からきた男」の一場面。(c)Miraikan、データ提供: The Illustris Collaboration

 今年に入ってから重力波の検出のニュースもあり、世の中の宇宙への関心が高まっているのを感じる。だが、宇宙はまだまだ未知の世界。どこまで行けば、私たちは宇宙を完全に理解したことになるのだろう。宇宙の成り立ちをすべて説明してくれるような理論がどこかにあるのだろうか。

 そんな途方もない世界を、ストーリー仕立ての3D映像で表現しようとする作品が誕生した。それは、お台場の日本科学未来館で4月20日から公開されている、ドームシアター新コンテンツ「9次元からきた男」。

 監修にカリフォルニア工科大学教授・理論物理学研究所所長で東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構主任研究員の大栗博司氏を、監督にホラー映画『呪怨』などの清水崇氏を迎え、今までにない物理現象の表現に挑戦した。

 その企画を担当した科学コミュニケーターのKontopoulos Dimitrios (コドプロス・ディミトリス、以下ディミ)氏に、映像のテーマである「万物の理論」とは何か、映像で表現したかった世界について聞いた。

Kontopoulos Dimitrios (コドプロス・ディミトリス)氏。ギリシャ出身の科学コミュニケーター。専門分野は太陽系外惑星。外惑星系がどのように形成するかのシミュレーションで、修士号を取得。

これまでの世界観:量子力学と相対性理論

――今回の映像のテーマとなっている「万物の理論」とは何なのでしょうか。

ディミ 宇宙、自然、世界で起こっている物理現象を1つの理論、1つの方程式のセットで表現するものです。これまで、さまざまな物理学の理論が存在し、それらは量子力学と相対性理論に統合されてきました。量子力学は分子・原子レベルより小さなミクロの世界を、相対性理論はそれ以上のマクロな世界を対象としてきました。しかし、この2つの理論は根本的に異なるため、1つの理論にまとめることはできません。