川越一番街(酒造りの町並み、街画ガイドより)

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埼玉の小江戸

 埼玉県川越市は武蔵野台地の東北端、首都30キロ圏に位置する、人口35万421人(推計、2016年2月)の市である。江戸時代には江戸北方の守りとして川越城が築かれ、徳川氏の重臣が入封し、親藩・譜代の川越藩の城下町として栄えた。

 重要伝統的建造物群保存地区である蔵造りの街並みや、江戸・天下祭を受け継ぐ川越まつりなど江戸情緒を残す「小江戸」の別名を持つ。

 城跡・神社・寺院・旧跡・歴史的建造物が多く、文化財の数では関東地方で神奈川県鎌倉市、栃木県日光市に次ぎ、歴史まちづくり法により、国から「歴史都市」に認定されている(埼玉県内唯一の認定)。

 現在一番街に立ち並ぶ黒漆喰の豪壮な店蔵は、まさしく「小江戸」の面影であり、大棟を箱形に覆った箱棟、屋根の両端に丸く盛り上がったかげ盛、大きな鬼瓦、重厚な観音開きの扉など、川越の町並みの特徴を見て取れる。

 このように戦災や震災を免れたため歴史的な街並が今に残っており、2014年度は年間約658万人もの観光客が訪れる(2003年は年間400万人)。また海外メディアなどでも取り上げられることが増え、外国人観光客は前年比70%増の年間約8万人(2014年)となっている。

 そのため外国人向けの観光ガイドも盛んで、英語、中国語、韓国語、ポルトガル語で書かれたパンフレットが用意されたり、英語で川越市を案内するボランティアのグループ「川越を英語で歩こう会」などは、1989年に創立されこれまでに世界数十か国からの数多くの人たちを案内してきている。

 また、フランス・パリのヴェリブと同様の自転車先進貸出システムである「川越市自転車シェアリング」が実施され、市役所・川越駅・市内の各観光名所などに設置されたポート(駐輪場)のどこでも24時間自転車の貸出・返却(乗り捨て)ができる。

 さらには、2008年から川越商工会議所を中心に小江戸川越検定が行われており、2015年までに7回実施され、これまでに最難関の1級合格者24人にマイスターの称号を与えるなど観光案内人材の育成も着実に進めている。

町並みとデザインコード

 川越一番街を中心とする旧市街地は、行政に代わって文化財保存運動と衰退していた街の活性化を進めたことが高く評価され、グッドデザイン賞の第1回「アーバンデザイン賞」(1999年)を受賞している。

 かつて1970年代末から市内に高層マンションが建設されるようになり、その反対運動を通じて人々の街並み保全への関心が徐々に高まっていった。

 そのようななか、川越市が1981年に「川越の町並みとデザインコード」の検討を専門家に依頼し、共同研究の結果、単なる規制ではない町並み保全の重要性とそのための住民・行政などの協働体制の確立の重要性が認識された。