ナゴルノカラバフの衝突続く、死者46人に 事態の深刻化に懸念も

アルメニアが支配するアゼルバイジャンのナゴルノカラバフで、アゼルバイジャン軍に向かって砲撃するナゴルノカラバフ自衛軍のアルメニアの兵士たち(2016年4月3日撮影)〔AFPBB News

2016年前半における旧ソ連邦諸国のトピックス

 旧ソ連邦諸国では2016年前半、様々な動きがあった。特筆すべきは、11世紀に東西分裂したローマ・カトリック法王と東方正教会の盟主ロシア正教会総主教が21世紀に会談し、本格的和解への第一歩を踏み出したことだろう。

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はロシア軍に対し2016年3月14日、シリア撤退を命じた。なぜ唐突にシリア撤退を発表したのか、様々な憶測が流れている。

 ロシア側説明では「目的を達したから」となるが、筆者は油価低迷により国庫財政が逼迫して、戦費調達に支障をきたしたのが最大の理由と考える。同様に他の旧ソ連邦天然資源諸国も、油価低迷により経済は危機的状況に陥っている。

 ウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領は4月5~7日訪日予定だが、ウクライナ政局は流動化している。ポロシェンコ大統領の政権基盤は脆弱であり、政府は崩壊の瀬戸際にある。

 カスピ海と黒海に挟まれたコーカサス地域では4月2日、アゼルバイジャンとアルメニア間で長年の係争案件となっているナゴルノ・カラバフ紛争が再燃。

 両軍はいったん停戦合意したが、原稿執筆中の4月4日現在も戦闘は継続しており、多数の死傷者が出ている。今後の戦況いかんでは本格的戦闘状態となり、両軍の全面戦争に発展する恐れもある。

 日露関係に目を転じれば、今年は日ソ国交回復60周年記念の年になるので、安倍晋三首相は日露関係改善、特に領土問題解決に積極的に取組む姿勢を内外にアピールしている。この一環として、2016年5月6日にはロシア黒海沿岸のソチにてプーチン大統領と非公式首脳会談を予定しているが、会談に臨む日本側の焦りも見え隠れしている。

 最初に2016年上半期における旧ソ連邦諸国を中心とした主要な動きを概観したい。 

◆ 1月3日:サウジアラビアとイラン、国交断絶→予想に反し、油価さらに下落。
◆ 1月9日:トルクメニスタンのベルディムハメドフ大統領、内閣改造発表。
◆ 1月16日:対イラン経済制裁措置解除→油価続落。
◆ 1月20~23日:ダボス会議(経済フォーラム)開催(於スイス)。
◆ 2月 9日: 米EIA(エネルギー省エネルギー局)、短期油価予測発表→2016年1バレル約37ドル、2017年約50ドルの予測。
◆ 2月12日:露正教会総主教とローマ法王、1000年振りの会談→和解への第一歩。
◆ 2月16日:ロシア・サウジアラビア等4石油相会談→油価乱高下。
◆ 3月8日:米EIA、短期油価予測発表→2016年1バレル約34ドル、2017年約40ドル。
◆ 3月14日:プーチン大統領、シリアからのロシア軍撤退を指示。
◆ 3月18日:プーチン大統領、クリミア訪問。クリミア併合2周年。
◆ 4月2日:ナゴルノ・カラバフ紛争再燃。停戦合意後も戦闘継続。本格的戦闘へ?
◆ 4月5日:ウクライナのポロシェンコ大統領、訪日予定。
◆ 4月12日:米EIA、4月度短期油価予測発表予定→2016年油価?、2017年油価?
◆ 4月17日:カタールのドーハにて、原油生産国による生産調整会議開催予定。
◆ 5月6日:黒海沿岸ソチにて、プーチン大統領と安倍首相非公式会談予定。
◆ 5月26~27日:三重県志摩市にて、主要国首脳会議開幕予定(伊勢志摩サミット)。