(英フィナンシャル・タイムズ紙 2016年3月19/20日付)

バングラ中銀総裁、91億円ハッカー被害で引責辞任

バングラデシュの首都ダッカの自宅で取材に応じるバングラデシュ銀行のアティウル・ラーマン前総裁(2016年3月15日撮影)。(c)AFP/Mahmud Hossain Opu 〔AFPBB News

 2月のある朝、バングラデシュ銀行(中央銀行)の共同口座責任者のジュベイル・ビン・フーダ氏がダッカの本店に行ったとき、プリンターが動かなかった。苛立たしかったが、特に警戒するようなことでもなかった。

 イスラム教徒が圧倒的に多いバングラデシュでは、2月5日金曜日は週末の始まりで、初めてのことではないが、セキュリティーが厳重なトランザクションルームのプリンターに不具合が生じていた。

 これはビン・フーダ氏が前日の取引・決済のリストを収集できないことを意味した。

 翌日、同僚たちとともに再びオフィスに赴くと、国際銀行間通信協会(スイフト)の金融決済システムを開くことができなかった。ビン・フーダ氏は先日ダッカ警察に提出された報告書で、「モニター画面には『ファイルが1つ欠けているか変更されています』という通知が出ていた」と述べている。

 明らかに、何か問題があった。だが、バングラデシュ銀行が、歴史上最も成功した部類に入る銀行強盗の被害に遭ったことに気づくまでに、さらに2日かかった。サイバー窃盗犯らがニューヨーク連銀経由でスリランカとフィリピンの口座に送金を行い、8100万ドルを懐に入れたのだ。

 バングラデシュ銀行の複数の関係者によれば、一連の取引に気づいた後、米連銀とマニラのリザル・コマーシャル・バンキング・コーポレーション(RCBC)、米国の中継銀行のシティバンク、バンク・オブ・ニューヨーク・メロン、ウェルズ・ファーゴ、スリランカのパン・アジア銀行に取引停止指示を出した。だが、手遅れだった。

 今回のサイバー強盗は世界中に波紋を広げ、取引先や従業員に何百万ドルものお金を払うために銀行口座に多額の残高を預けている銀行や大企業を震撼させた。

誤字で免れた2000万ドルも

 2月6日になってようやくコンピューターとプリンターが使えるようになったとき、ビン・フーダ氏とスタッフたちはニューヨーク連銀から複数のメッセージが届いていることを知った(多くの国と同様、バングラデシュは保有外貨の一部をニューヨーク連銀に預けている)。