列車を撮影する松永カメラマンの周りに駅の利用者たちが興味津々な様子で集まってきた

 現場を踏むことで得られる経験は 確かに大きいようで、10月末か らインドネシアで地下鉄の施工監 理に携わり始めた西尾さんも、「詳細設計を見ていたからこそ施 工段階の留意事項や入札図書の意 味が理解できる」と頼もしい。

 えり好みせず柔軟な姿勢で業務に取り組む西尾さんが、今回の撮影チームの受け入れを通じて、人々に「知ってもらう」ための広報マインドを併せ持つ未来のプロマネ像に一歩近づいたことは間違いなさそうだ。

踏切の渡り方

 同じ月の上旬、ヤンゴン市中心部から1時間ほど車を走らせたイーストダゴン地区の学校でも「伝える」ための活動が行われた。

 ヤンゴン~マンダレー線のトーチャンガレー駅とイワタジ駅の間に位置するこの学校には、小学生から高校生までの児童・生徒らが時間差で通学しており、数百メートル先の踏切を渡って登下校する子どもたちも少なくない。

 国際協力機構(JICA)は、列車の運行管理や安全性の改善に向けた協力の一環として、このチャンシッター踏 切の自動警報装置などの機材を無 償資金協力により整備。10月末 に新しい踏切システムが導入されたことから、この日、同校に通う 6~9歳までの小学生を対象に安 全講習会が開かれたのだ。

踏切の渡り方について説明する村上さん(左)=JIC提供)

 講堂に集まった約400人の児童を前に、日本コンサルタンツ(株)(JIC)の村上誠さんは緊張気味だった。

 おそろいの白と緑の制服を 着た子どもたちが床に整然と座り、物珍しそうに村上さんを見上げている。

 現地の日焼け止めである黄色のタナカを頬に塗っている姿は愛らしいが、「こんなに多くの子どもたちを途中で飽きさせずに話を聞かせられるだろうかと不安になりました」。

 しかし、一方的に話すのではなく、「日本がどこにあるか知っていますか?」と問いか けたり、プロジェクターの画面にイラストを多用するなどした工夫が奏功し、興味深そうに話を聞いてくれる子どもたちに勇気付けられて落ち着きを取り戻した村上さん。

 列車が近付くと警手が手動で遮断機を出して車両の通行を止めていた従来の踏切と、警報音と共に自動で遮断機が下りてくる新しいシステムの映像を続けて見せながら、踏切を渡る時の留意点について説明し、「皆さんが今日学んだルールをしっかり守ってくれることを願っています」と講習会を締めくくった。