原子力空母ジョン・C・ステニスのデッキ。2016年3月5日、南シナ海にて(写真:米海軍)

 かねてより九段線を設定して「南シナ海の大半は中国の主権的領域である」との主張を展開している中国と、南シナ海での軍事的優勢をなんとかして確保しておきたいと考えるアメリカ軍の応酬が激しさを増している。

 アメリカ海軍は、さして効果的ではないと考えられている「FONOP」(公海航行自由原則維持のための作戦)に加えて、いよいよ先週には、多数の艦載機を搭載した原子力空母ステニスを中心とする空母打撃群(艦隊)を南シナ海に送り込んだ。

九段線(赤い大まかな点線)を示す中国の地図
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「アメリカこそが南シナ海での軍事化を進めている」と中国

 アメリカ海軍の太平洋艦隊司令官を務め現在は太平洋軍司令官の重責を担っているハリス海軍大将や、対中牽制派のアメリカ軍人やシンクタンクの研究者たちは、かねてより南シナ海や東シナ海での中国による軍事的侵出政策に警鐘を鳴らし、アメリカは断固たる軍事的牽制を加えなければ「取り返しがつかない状況になりかねない」と警告を発し続けてきた。

 しかしオバマ政権は、対シリア政策と同様に、中国の覇権主義的海洋政策に腰が引けた姿勢で接してきたため、太平洋艦隊などから湧き上がっていた対中強硬姿勢はなかなか実現することはなかった。