(2016年2月23日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

ロンドン市長、EU離脱支持を表明 キャメロン首相に痛手

英ロンドンの自宅前で、英国の欧州連合(EU)離脱支持を表明するボリス・ジョンソン市長〔AFPBB News

 政界の出来事のほとんどは、それほど重要ではない。ウソだと思うなら、1年前に報じられたニュースを調べてみればいい。

 2015年2月23日に英国の放送局各社は、総選挙を控えたテレビ討論会の順番について合意した。だが、デビッド・キャメロン首相は討論会に出てくるだろうか、という疑問があった。

 そこで労働党のダグラス・アレクサンダー選対本部長は公開書簡で首相を挑発した。ジャーナリストたちは、出てこないなら空っぽのイスを代わりに置いておくぞとダウニング街の「腰抜け」に警告を発した。

 討論を避ける態度は評判を大きく落とすというのが彼らの一致した見方だった。最終的に首相は折れ、面目を失った。最初の討論で見せたたどたどしさは、保守党の選挙運動がお粗末さであることの証拠となった。

 さて、そのキャメロン氏は、今でも首相を務めている。片やアレクサンダー氏は落選し、著名バンドU2のボーカルの慈善事業を手伝っているらしい。選挙戦での討論や細かい戦術で勝敗が決まったのだと思っている人は、英国の素晴らしい春をムダにしたわけじゃなかったと一生懸命強がっているだけだ。

 そういう人は、ロンドンのボリス・ジョンソン市長が2月21日に「Brexit(ブレグジット、英国の欧州連合=EU=離脱)」推進論者に改宗したと(明確にではなく長々と)語ったのを聞いて興奮し、これでEU離脱が実現する可能性が大いに高まるなどと考えるかもしれない。

ロンドン市長の離脱支持で何かが変わるのか?

 誤解のないように言っておくが、有権者はジョンソン氏を気に入っている。だが、「国宝」だと言われることもあるベテラン女優ジュディ・デンチのことも気に入っている。誰かのことを気に入っているということと、深刻な問題についてのその人の判断を尊重するということとは、全く別の話だ。国宝であることと、国の宝を託されることは別の話なのだ。

 ジョンソン氏は英国で最も好かれている政治家であり、その点では群を抜いている。だが、それは同氏が大臣になるまでのことでしかない。ひとたび大臣になれば、ほかの政治家たちが下してきたものと同じたぐいの、誰かの怒りを買う決断を下さざるを得なくなる。

 同氏はこれまで、増税をする必要もなかったし、軍隊を海外に派遣する必要もなかった。首相と違い、国民が聞きたくない話をたくさんする必要もないし、国内各地で生じるいろいろな不祥事の責任を取る必要もない。