最近は歯科医のイメージも変わりつつある(写真はヨリタ歯科クリニックにて筆者撮影)

 ICT(情報通信技術)の進展により、企業経営がガラス張りになる「透明化社会」。顧客に選ばれ続ける企業になるためには、確固とした経営理念・経営哲学が不可欠だ。

 前回の記事では、大きな失敗を経て自社の事業を再定義し、確固たる経営理念を持つに至った会社として、ファミリーレストランチェーン、坂東太郎を紹介した。家族団らんの場を提供する、真の「ファミリーレストラン」と呼べる会社だ。

 そして今回、ご紹介するのは歯科医院だ。歯科医院と聞くと、いい思い出やイメージを持たない人が大半だろう。ドリルで歯を削られた時の感覚は思い出すだけでも身震いする。

 そんな歯科医院のイメージを根底から覆す取り組みによって「患者が決めた!いい病院ランキング近畿東海版」歯科部門No.1を獲得し、2013年度「おもてなし経営企業選」(経済産業省)、2015年度「ホワイト企業大賞」にも選出されたヨリタ歯科クリニック(以下ヨリタ)を紹介する。

ワクワク楽しい!歯科医院

 近鉄奈良線・河内花園駅前のロータリーに面したビルの3階にヨリタはあった。160坪という広々としたスペースに、ホテルのロビーのような受付、4つのカウンセリングルーム、18台の診療台、キッズルームなどを備え、私の歯科医院のイメージを覆すには十分だった。

ホテルのロビーのような待合室(ヨリタ歯科クリニックにて筆者撮影、以下同)

 取材に応じてくれたのは、「ドリームマスター」という肩書きを持つ寄田幸司理事長(院長)と、「スマイルクリエイター」「感動クリエイター」の肩 書きを持つ新谷順子さんだ。新谷さんはフロント業務の最高責任者であり、受付業務を中心に、時には、カウンセラーやアシスタンとしても活躍している。

ライバルは、ディズニーランドとリッツ・カールトン

 厚生労働省の調査によれば、2015年11月末現在、全国の歯科診療所数は6万8779施設で、この数は、日本フランチャイズチェーン協会が発表している全国のコンビニエンスストア数の約5万店(同じく2015年11月現在では5万3309店舗)よりも多い。

 実際、ヨリタの徒歩10分圏内には22軒の歯科医院があり、この激戦を勝ち抜いて経営を続けることは容易ではない。しかし、ヨリタの1日あたりの 平均来院患者数は170名と、全国平均の約10倍。来院患者の多くが患者からの紹介によるもので、遠方から訪れる患者も多いという。