(英エコノミスト誌 2016年2月20日号)

ロシアの大胆さと米国の弱腰が、戦争の行方を悪い方向へと動かした。

連続自爆攻撃で155人死亡、ISが犯行声明 シリア

シリアの多くの街が瓦礫の山と化している〔AFPBB News

 シリアの戦争ほどおぞましい戦争では、いくつかの寒々とした教訓が浮き彫りになる。長引けば長引くほど残虐さが増し、より多くの国が渦に巻きこまれ、戦いをやめる――少なくとも拡大させない――選択肢はますます受け入れがたいものになる。だが、恐らく最大の教訓は、米国の不在により生じた空白は危険な勢力により埋められる、ということだろう。危険な勢力とは、ジハード(聖戦)主義者、シーア派の民兵、そして大胆さを増したロシアだ。

 シリアの内戦は、1つの戦争の中でさまざまな戦争が交錯する、手に負えない状況になっている。

 独裁政権に対する蜂起、スンニ派とアラウィ派(そしてシーア派の同盟者)との宗派争い、スンニ派アラブ勢力の内紛、独立国家を求めるクルド人の闘い、サウジアラビアとトルコがイランと対立する中東地域の代理戦争、そして弱腰の米国と復活したロシアの間の地政学的抗争が複雑に絡みあう。

いっそう複雑になる血まみれの混乱

 この血まみれの混乱に足を踏み入れたウラジーミル・プーチン大統領は、バシャル・アル・アサド大統領と「シーア派枢軸」の側に立った。ロシアの空軍力により、戦場の様相は一変した。親アサド勢力は、トルコから反政府軍が掌握するアレッポへ物資を供給する重要な補給路を遮断した。

 アサド大統領は、かつてシリア最大の都市だったアレッポを包囲する寸前まできている。難民が再びトルコとの国境に押し寄せているが、多くの人はそのままとどまるだろう。停戦と人道支援、政治的合意をめぐる外交駆け引きでは、いまやロシアが主導権を握っている。ちょうど、1990年代のボスニア紛争に介入した後の米国と同じだ。

 バラク・オバマ大統領のシリア政策――アサド大統領の退陣を願うだけで、排除のための積極的手段を取らない――は、みじめな結果に終わった。アサド政権はどうやら、オバマ政権よりも長く続きそうだ。だが、戦争は終わらないだろう。それどころか、さらに悪い方向へと進んでいる。

 この大混乱の深みに吸いこまれつつあるのがトルコだ。トルコは、シリアのクルド人勢力に対する組織的な空爆に踏み切った。トルコ政府は、シリアのクルド人勢力をトルコ国内のクルド人勢力と一体と見なしているのだ。トルコのクルド人勢力は、数十年前に始まった国内での反乱を軽率にも再び活発化している。

 だが、クルド人はこれまで、イスラム国(IS)の「カリフ制国家」と戦ううえで、米国の最大の同盟者となってきた。最近では、クルド人勢力はロシアとアサド政権に接近し、トルコ国境沿いにある2つのクルド人地域を合体させることを狙い、アレッポへの補給路の遮断に力を貸している。