アインシュタイン予言の重力波、直接観測に初成功 国際チーム

観測された重力波を示す図。米首都ワシントンのナショナルプレスクラブで開かれた記者会見で(2016年2月11日撮影)〔AFPBB News

 高エネルギー宇宙物理学者の小谷太郎博士が簡潔にポイントを記されたコラム「重力波検出のすごさ、子どもに説明できますか?」はとても価値のあるものと思います。

 と言うのも、発表があってからわずか1週間、一線の専門家の手になる、正確で平易な解説が日本語で誰にでも読める形になっている。報道資料の丸写しといった類ではなく、実の所SF小説も書く宇宙物理学者が、自分の子供に話すように分かりやすく要点を押さえている。

 こういう記事が社会に普及することで、日本の科学リテラシー全体の密度が上がっていくことを大きく期待したいと思います。

 私自身を含め、科学の教育は受けたけれどその道の専門家ではない、という人間にとっては、

 「ひとまず1つ目のデータが出たということで、今後を見守りたい」

 というところで留まる話を、もう一歩先、二歩先まで踏み込んで書くことができる。実は小谷君は物理学生時代からかれこれ30年近い友人で、少し後輩に当たり、大学院での研究テーマは違いましたが、「量子力学の観測問題」というテーマをめぐる読書会などを一緒に開いていた仲間でもあります。

 今回は、小谷君がシンプルにまとめた稿の延長で、今回測定の実際について、主として原著論文(B.P.Abbott et al.”Observation of Gravitational Waves from a Binary Black Hole Merger”Phys.Rev.Lett.116,061102(2016)をリソースとして、いくつかのポイントを選んでお話してみましょう。

新しい巨大科学のあり方

 2015年9月14日、米国時間の9時50分45秒、約3000キロ離れた2つの「重力波検出レーザー干渉計システム」は同時に波動のシグナルを観測します。

 周波数は35ヘルツからだんだん加速して250ヘルツまで上昇、これは一般相対論が予測する、対になった2つのブラックホールが合体して単一の巨大ブラックホールになる際に示す波形と一致するものでした。

 このような現象が偶然に起きる確率は20万3000年に1イベント程度の稀さでしかありません。

 太陽質量の約29倍と36倍の巨大ブラックホール連星系が衝突し、結果的に太陽質量の62倍の単一ブラックホールが誕生するとともに、太陽の3倍ほどの質量が重力波として宇宙に広がっていったものと考えられます・・・。