(英エコノミスト誌 2016年2月13日号)

職場のダイバーシティー(多様性)を最大限に生かすためには、善意のみならず懸命な努力が必要になる。

 ロナルド・レーガンはかつて、英語という言語で最も恐ろしい9文字は『I’m from the government and I’m here to help(私は政府の人間で、助けに来た)という言葉だ」と言った。今、これに僅差で迫る12文字がある。「I’m from human resources and I’m here to organise a diversity workshop(私は人事部の人間で、ダイバーシティーの研修会を開くために来た)」がそれだ。

 ほとんどの人は、人前ではダイバーシティーに賛同を示す。だが、彼らが内々に考えていることは、それとは大きく異なることがある。

 人事コンサルタントの中には「ダイバーシティー疲れ」について心配し始めている人さえいる。

多様性の恩恵は明白だが・・・

 ダイバーシティーを是とする議論は強力だ。最も明らかな議論は、ダイバーシティーはただ単に、現代世界に関する事実だというものだ。女性はものすごい数で労働人口に加わっている。大量の移民は欧米社会を変容させている。スウェーデンのようなかつて同質だった国でさえ、外国生まれの人たちが人口の14%を占めている。

 同性愛の男性と女性は、職場の内外で秘密にしておく必要を感じなくなっている。この事実を無視する企業は、才能ある人材を獲得・維持できなくなるかもしれないし、顧客から取り残される恐れもある。ダイバーシティーの恩恵をさらに裏付ける材料として、ピーターソン国際経済研究所が先日発表した調査研究では、女性幹部が大勢いる企業ほど収益性が高くなるようだということが分かった。

 異なる考え方や視点を持つ人と出会うことで想像力が高まるという常識的な考えを裏付ける証拠もある。シカゴ大学の社会学者、ロナルド・バート教授は、より多様な情報源を持つ人の方が一貫してより良いアイデアを生み出すことを示す研究をいくつも発表している。

 マサチューセッツ工科大学(MIT)のサラ・エリソン氏は、男女混合チームの方が、男性か女性のどちらかが大多数を占めるチームより創造的な解決策を生み出せることを示してみせた。そして、グーグルの社内調査では、多くの場合、多様性を持つチームが最も革新的であることが分かっている。