「ああ、分かっちゃいなかった!」

 と、“その時初めて知る”経験は、誰しもあると思う。私の場合、60歳を超えとみに多くなった。

 思い込みが強く頑固な性格なのが、普通の気付きを遅らせているのかもしれない。最近得心しているのは、今までの人生で「こうと思い込んだこと」の8割方は、間違っていたり、見当違いだったり、全く本質をみていなかったり・・・ということである。

「人は分からないもの」と次第に痛感

 例えば、私は常に何かにチャレンジしていないと息苦しく感じてしまい、皆そうなのかなあ、と考えていた。しかしながら、安全、安心が確保されて初めて実力が発揮できるタイプの人が存在することも事実で、むしろ後者の方が大多数なのかもしれない、ということに気付いた。

 また、見栄や体裁を気にして自分の弱点や恥を人前でさらすのを極端に嫌う人も多い一方で、それらをさらりと言える人の中になかなかの人物がいらっしゃる、ということ。

 もう一つ、内実も外見も謙虚で優しく、粛々と仕事をこなす人格者と言えども、その裏に隠されているダークサイドが存在して初めてバランスを保っている方々もいらっしゃる、ということ。

 その逆も真であり、一見悪人が内実素晴らしい精神性を持ち合わせていることも多いこと。

 人材関連の仕事に長年携わる中で、つくづく「人は分からないものだ」と痛感するようになった。複雑で奥の深い「人材」というものに関わっているので、このような経験が比較的多いのかもしれない。だが、それだけではない。それ以外のジャンルでも「その時初めて知る」という経験が最近増えているのである。