(2016年2月8日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

多重危機に見舞われている欧州。もしユーロ圏の大国で極端な政治思想を持つ指導者が政権を握ったら、どうなるか・・・ (c) Can Stock Photo

 ジョン・ワイツによるヒャルマール・シャハトの伝記『Hitler’s Banker(邦訳:ヒトラーを支えた銀行家)』を読み返したら、これまで筆者が考えていなかった1930年代と現在の興味深い共通点に気づいた。

 ヒトラーが再軍備計画の資金を賄うために、配下の中央銀行総裁だったシャハトに頼ったことは、よく知られている。

 だが、ワイツは――そしてここが今日のユーロ圏に潜在的に関係するところだが――、シャハトがライヒスバンク(ドイツ帝国銀行)で非伝統的な政策を追求できたのは、ひとえに独裁者の後ろ盾があったからだとも指摘している。

 例えばイタリアやフランスなど、ユーロ圏に属する大国で極端な思想を持つ指導者が権力を握り、もし彼らがシャハトの才覚を持った中央銀行総裁を任命したら、どうなるだろうか。そして、そのようなチームが短期的に経済成長を高めることに成功する可能性はどれくらいあるだろうか。

ヒトラー人気を支えた急激な景気回復の立役者

 最初に言っておきたい。筆者は決して誰かをヒトラーやシャハトと比べているわけではない。筆者の論点は、もし正統的な通念を破る政治的支持を得ていたら、非伝統的な中央銀行家には何ができるか、ということだ。

ヒトラーを支えた中央銀行家シャハト(Wikipediaより

 シャハトはライヒスバンクの総裁を2度務めた。1920年代に当時ドイツを麻痺させていたハイパーインフレを終わらせた時と、1933年から1939年にかけての再登板だ。

 シャハトを1つの経済的見解と結びつけるのは難しい。1920年代には金本位制を支持していたが、1930年代前半になると、緊縮・デフレ政策を奨励するコンセンサスに反対した。

 シャハトはいみじくも、ドイツは1929年に採用された「ヤング案」に明記された賠償金支払いに応じることができないと訴えた。