(英エコノミスト誌 2016年2月6日号)

アイオワ州党員集会の勝者はどのような人物なのか。どのような大統領になりそうか?

16年米大統領選、茶会派クルーズ氏が出馬表明

アイオワ州の党員集会で下馬評を覆しトップに躍り出たテッド・クルーズ氏〔AFPBB News

 アイオワ州の共和党党員集会で上位2位に入った大統領候補のうち、1人は誰が見ても分かりやすいタイプだ。政策に欠け、自尊心が高く、大げさな物言いが多く、自国をけなし、その国を自らの意志の力で救うと約束する。このドナルド・トランプ氏のいかにも大物らしい特徴は、リアリティ番組と不動産ビジネスによって歪められているとはいえ、ブエノスアイレスからローマに至るまで世界のあらゆる場所でよく見られるものだ。

特殊な時代が生んだ政治家

 一方、アイオワ州の党員集会の勝者であるテッド・クルーズ氏は、米国のある特別なバージョン、しかも米国史のなかでも特殊な時代の申し子と言える政治家だ。

 一部の米国人はクルーズ氏が掲げる信心深い旗のもとに集結しているが、同氏はほかの多くの米国人を拒絶し、困惑させている。

 テキサス州選出の上院議員であるクルーズ氏は、表面的に見れば、典型的な成功した野心家だ。山のように高い障壁を乗り越える能力――初めての政治レースで議員の座を勝ちとったのもその一例――は、同氏の強固な自信を示すと同時に、その自信の源にもなっている。精力的な計算と恐るべき知性が、急速な出世の原動力になっているタイプだ。

 昔からクルーズ氏を知る裁判官のドン・ウィレット氏は、「異常なほど才能のある」法律家だと評価する。テキサス州訟務長官時代に最高裁で弁論をする同氏を見た時には、「ムーンウォークを披露するマイケル・ジャクソンを見ているような気がした」。

 現代の多くの政治家の例に漏れず――トランプ氏はあてはまらないかもしれないが――、クルーズ氏も鍛錬を重ね、不気味なほど自らを律している。遊説中には、何度も同じジョークを言い、同じジェスチャーと自己満足的な笑いを添え、自著『A Time for Truth』の長い文章を一字一句違わずに引用する。いかにも法律家らしいうまいやり方で、分別と正直さの範囲を押し広げ、そこからあからさまに逸脱するのを避ける。

 だが、そうした定型的な才能にもかかわらず、クルーズ氏はその見解と訴求力という点で、金融危機とバラク・オバマ大統領就任後の激動の時代の、そして自身の育ちの特異な産物と言える。

 クルーズ氏の核をなす多くの信念と同様、同氏の福音主義的信仰――アイオワ州での勝利演説は「神に栄光あれ」で始まった――も、父親であるラファエル・クルーズ氏に由来している。ラファエル氏はキューバ難民としてテキサス州に逃れ、酒に溺れたのちに神を見い出し、現在は熱心な牧師となっている。