「最近、扱いが激増して全国を飛び回っている。嬉しい悲鳴だ」──。

 金融危機に端を発した景気低迷、派遣切りなど雇用問題が世情を混乱させている中、ある業界関係者が多忙を極めている。

 この不況時に活況を呈している業界とは何か。答えは、サービサー(債権回収業者)だ。

 米国主導の世界的な景気拡大路線が頓挫した今、リストラで事業規模を絞り込む企業、あるいは市場から退出を迫られる企業が増加中だ。これと連動する形で、サービサーの活動範囲が広がっているという構図だ。

 金融危機がサービサーにどのような特需をもたらしているのか。その中身を見てみよう。

バルクセールが活発化

 「これからは選り取りみどり」とは、あるベテランサービサーの弁だ。昨年秋以降、景気が急速に冷え込む中でバルクセールが急増していることが、「選り取りみどり」という言葉の背後にある。

 バルクとは、金融機関が抱える多数の不良債権を1つのパッケージにして第三者に売却する手法のこと。1990年代後半、不良債権処理に苦慮する大手邦銀が活発化させ、その名が一躍有名になった経緯がある。

 今般の不況でも、当時と同様に不良債権が専門業者に売却されている。関係者の話を総合すると、現在売りに出されているのは「古いメガバンク案件と、撤退を始めた外資系金融機関のモノが中心」だという。

 具体的にはどんな債権が売りに出されているのだろうか。ある関係者は絶対匿名を条件にこんな話をしてくれた。

 「邦銀がバブル経済の清算で外資に叩き売った20年モノなどが多い」。これらは「2次バルク」とも呼ばれ、本来価値は二束三文とされるが、「元は数億、数十億の融資を受けた先であり、客筋は悪くない」という。

 例えば、経営者が資産家一族の一員だった場合などは、「破産はかわいそうだとして、親戚などが数百万~1000万円単位で援助。和解による債務整理をしてくれるケースもある」とのこと。「やっぱりバブル期の債権は古くてもおいしい」のだという。

個人債権も市場に

 メガバンク案件では、「4~5年前にベンチャーブームで起業したものの、破綻した新興企業の屍が多い」とされる。外資系投資銀行とノンバンクがベンチャー投資を活発化させた中で、「社会的使命感から無担保ビジネスローンに追随したメガバンクの融資の大半は丸焦げ」(別の関係者)となり、これらがバルク市場で急増しているようだ。