中国軍の兵力30万人削減を表明、習国家主席

中国・北京の天安門広場で、抗日戦勝利70周年を祝う式典に備える人民解放軍の兵士たち(2015年9月3日撮影)〔AFPBB News

 中国は、2015年12月31日に大規模な人民解放軍の改革を発表した。この改革は習近平国家主席の長年の念願であり、毛沢東や江沢民時代でさえ手をつけなかった軍改革である。

 軍内に存在する江沢民派などに対する権力闘争の側面もあるが、ライバルである米軍の長所を吸収し、「真に戦える軍隊。戦って勝利する軍隊」を目指すものである。

 本稿では重大な意味を持つ中国人民解放軍の改革について、人民解放軍の軍事戦略である「超限戦」(Unrestricted Warfare)、超限戦と密接な関係にある米軍の「クロス・ドメイン作戦(CDO: Cross Domain Operation、「ドメインを越える作戦」)」 およびロシア軍が実際にウクライナで実施している「ハイブリッド戦(Hybrid Warfare、「混合戦」)」などを切り口として分析してみたいと思う。

1 超限戦

 超限戦は、中国人民解放軍の大佐2人(喬良と王湘穂)が1999年に発表し、発表された当初から世界的に大きな反響を呼んだが、現在の中国やロシアの動向を観察すると、両国は超限戦を実践していると言える。

 超限戦は、湾岸戦争(1990年~1991年)などにおける米軍の戦略、作戦、戦術を研究して導き出された戦略であり、中国の孫子の兵法をも融合したものである。

 超限戦は、文字通りに「限界を超えた戦争」であり、あらゆる制約や境界(作戦空間、軍事と非軍事、正規と非正規、国際法、倫理など)を超越し、あらゆる手段を駆使する「制約のない戦争(Unrestricted Warfare)」である。

 正規軍同士の戦いである通常戦のみならず、非軍事組織を使った非正規戦、外交戦、国家テロ戦、金融戦、サイバー戦、三戦(広報戦、心理戦、法律戦)などを駆使し、目的を達成しようとする戦略である。

 倫理や法の支配さえも無視をする極めて厄介な戦争観である。

 中国は、現在この瞬間、超限戦を遂行している。例えば、平時からサイバー戦を多用し情報窃取などを行っているし、三戦(広報戦、心理戦、法律戦)を多用し、東シナ海や南シナ海で「準軍事手段を活用した戦争に至らない作戦」(POSOW:Paramilitary Operation Short of War)を多用している。

 POSOWの典型例は、南シナ海で領土問題を抱える諸国に対して、海軍の艦船を直接使用することなく、漁船、武装民兵、海警局の監視船などの準軍事的な手段を駆使し、中国の主張を強制している。「戦わずして勝つ」伝統を持つ中国は、軍事力の行使をしなくても様々な手段を駆使した戦いを実践しているのである。

 今回発表された人民解放軍の改革について、太子党の重要人物である劉亜州・上将は、その著書(「精神」)で「ライバルで強軍である米軍の長所を吸収するため」であると明かしている*1

 この米軍の長所の1つがクロス・ドメイン作戦(CDO)である。このCDOは、米国の作戦構想であるエア・シー・バトル(AIR-SEA BATTLE)*2の中で記述された考え方である。このCDOと共に、現在、ロシア軍がウクライナで実施しているハイブリッド戦(Hybrid Warfare、「混合戦」)を含めると超限戦に極めて近い戦い方となるので、以下説明する。

*1http://www.epochtimes.jp/2015/12/24834.html

*2=Air-Sea Battle Office、“AIR-SEA BATTLE”、May 2013