(2016年1月25日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

米NY、最貧地区とウォール街周辺の平均寿命の差は11年

ウォール街で働くバンカーや法律家などの専門職のエリートが昼夜働くのがステータスシンボルのように思われてきたが・・・〔AFPBB News

 先週、シニアバンカーが集まる社交イベントで、ふと気づくと、雑談を交わす6人の男性の輪に入っていた。グループを見回すと、5人が炭酸水の入った大きなグラスを握りしめており、私と一緒に、燕尾服姿のウエイターが差し出してきた冷えたシャンパンのフルートグラスを受け取ったのが1人しかいないことに気づいた。

 私はこのグループの節度についてコメントするという過ちを犯し、1月はみんな禁酒しているという支離滅裂な会話に火を付けてしまった。しばらくすると、シャンパングラスを持った男性が、自分はアルコールよりずっと難しいものを断ったと宣言した。

 彼の決意は、31日間だけでなく死ぬまで、過度な仕事を控えることだった。要領を得ない会議に出たり、夜11時にメールを書いたりすることに、うんざりしたのだという。

 過去3週間というもの、以前と同じだけ仕事の成果を上げたが、平均して週に7時間しか働かなかった。そして残りの時間を楽しく過ごしたそうだ。

 この話について驚くようなことは何もない。完璧に筋が通っている。仕事の量は持ち時間を埋めるように増えてく等々、言われる通りだ。それに彼は自分の予定を自分で決められるくらい上の立場にいる。

ケインズの予言がついに現実になるのか

 私がこの話をことさら取り上げる理由は、これが私の待っていた、夏の到来を告げるツバメかもしれないからだ。過去20年間、過大な報酬を得ている専門職の人々は、昼夜通して働き続ける永遠の冬から抜け出せず、それを普通のことと思うばかりか、立派なことだと見なしていた。

 ところが、ここに、競争が熾烈でワーカホリックな業界の上層部にいながら、働く時間がどれほど長いかはなく、どれほど短いか自慢することで同業者たちに自分を大きく見せようとしている人がいたのだ。