「国際ロボット展」開幕、災害時の実用性検証 東京

「2015国際ロボット展」で、バルブのハンドルを回す東京大学開発の人型ロボット「JAXON(ジャクソン)」。被災地でロボットがどう役立つか実演している(2015年12月2日撮影)〔AFPBB News

 「ロボエシックス(Robot-ethics)」という言葉をご存知でしょうか?

 まだ世の中にはほとんど出回っていない、ロボットにまつわる倫理(ethics)を扱う専門を指す言葉です。2016年1月、ミュンヘンで「ロボエシックス」にまつわる議論に参加してきました。

 「ロボットと倫理」と言うと、私個人は世代的に手塚治虫「鉄腕アトム」 で主人公が悩まされる「ロボット法」や、アイザック・アシモフの「ロボット工学3原則」 などSFがかったものを思いつきやすいのですが、いま産業用ロボットなどが直面する現実は、SFのロボティクスと言うよりは産業革命初期の機械破壊運動(ラッダイト・ムーブメント)などを想起させる、より現実的で生々しいものになっている。

 端的に言えば、人間の雇用をどう考えるかが、当初から大きな焦点になっているのが、SFと現実の大きな違いとだと思います。

SFはロボット法をどう考えたか?

 ここで(やや申し訳ないのですが)現実の社会問題としてはやや的を外した例としてアシモフの「ロボット工学3原則」を挙げてみましょう。

ロボット工学3原則(抄)

1 ロボットは人間に危害を加えてはならない
2 ロボットは人間に与えられた命令に服従しなければならない
3 ロボットは前二項に反しない限り自らを守らなければならない

 こうしたプロットは、ロボットたちが心を持ち、場合によっては人間と対立しながら宇宙大戦争に突入したりするシナリオ、プロットで血沸き肉踊るストーリーや主人公の奥深い悩みを演出するでしょう。

 ちなみに「鉄腕アトム」は、テレビアニメ化された30分ものと、原作の長編マンガとでほとんど別の作品になっています。長編アニメは主人公の懊悩が延々と描かれますが、それはまさに「心を持ったロボットの葛藤」と言えるものです。

 ロシア系ユダヤ移民の子として育った少年アシモフが暗黙に、奴隷やマイノリティの立場にシンパシーを寄せながら、こうした枠組みを考えたような気がします。すなわち、ロボットを「奴隷」あるいは「被用者」と置き換えてみれば分かりやすい。

A 奴隷/被用者は主人/雇用主に危害を加えてはならない
B 奴隷/被用者は主人/雇用主に与えられた命令に服従しなければならない
C 奴隷/被用者は前二項に反しない限り自らを守らなければならない

 こう記せば、多くの読者がロボットに感情移入しながら没入できる社会派スペース・オペラができるでしょう。しかし現実は全く違ったものになっています。